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株式会社グループSNEオフィシャルサイト

 

P138:「超・はじめてのAFF」シナリオ


「宝物庫からの脱出」
作:友野詳/グループSNE

はじめに:冒険の概要

 この冒険は、AFF2eのサプリメント『エンサイクロペディア・アルカナvol.1 アイテム集(以下アルカナ1)』で紹介されている魔法のアイテムのランダム表を活用するためのものです。ですので、プレイには当該サプリメントが必要になります。
 アイテム事典の仮想空間に閉じこめられたヒーローたちが、6種類のアイテムをランダムに出現させ、それを門番である石像に与えて、ここを脱出するストーリーです。
 格安で入手した宝は、このダンジョン内でだけ使えます。1つを持ち出すことはできますが、そのためには、仮想空間に閉じこめられた学者魔術師を置き去りにしなければなりません(これまで、何度も置き去りにされてきた女性です)。

 このシナリオは、作成したてのヒーロー2から3人で冒険することを想定しています。1人は魔法を使えるヒーローがいた方がいいでしょう。また、パーティは最低でも銀貨を5枚は所有していなければなりません(作成時に、お金を使い切らないようにしてください)。
 プレイに必要な時間は90~120分程度ですが、アドリブ展開で物語がふくらんだ場合、より長いプレイ時間を必要とするでしょう。

シナリオの改変について

 ランダム要素が高いため、アドリブ対応が必要になり、ディレクターにはかなりの熟練が要求されます。
 ですので、アドリブ対応を好まないディレクターは、シナリオ本文でランダム表をふるように指示されている場面で、ランダムではなくあらかじめディレクターが選択したアイテムを登場させるよう修正してかまいません。

冒険のはじまり

 ヒーローたちが、持ち主のいなくなった古い屋敷を探索している場面から始まります。既に、ほとんどの探索を終えた状況です。
 そしてたどりついた宝物庫で、いかにも「すごい力を秘めていそう」な、分厚い書物を発見しました(こんな本だ、と『エンサイクロペディア・アルカナ』を見せてもいいでしょう)。
 ヒーローたちが近づくと(近づいた、ということにして手早く展開しましょう)、書物は魔法の輝きを放ちます。
 次の瞬間、ヒーローたちは、自分たちがこれまでとは全く違う、石作りの部屋にいることに気がつきます。
 本能的に「書物の中に閉じこめられたのだ」とわかります。そう告げてください。
 部屋は7角形をしており、ひとつの壁には、大きな石像が飾られています。
 猛禽類の顔を持ち、トカゲの尾を生やした戦士の像です。
 くちばしが何かをくわえるように開き。
 腹部に、何かを捧げられそうな空洞があり。
 右手は何かを捧げ持つ形で。
 左手は何かを握りこむ形で。
 そして、尻尾は何かに巻き付くような形になっています。
 つまり、5か所、何かを追加できるように見えるわけです。
 探索を進めると「この像に5つのアイテムを捧げることで脱出できる」ことがわかります。まずは動いて調べるしかありません。ヒーローたちが躊躇しているようなら「扉の向こうを探索することで脱出手段がわかると、冒険者の本能が囁いている」などと誘導しましょう。

ダンジョン探索

 像がある他の6面の壁には、それぞれ石の扉が1つずつあり、上にはそれぞれ異なる出目のサイコロと、奥にある品のヒントになるレリーフが刻まれています。
 扉の向こうには、レリーフが象徴するものに該当する品が出てくる「魔法のガチャ」があります。ただし、ヒーローたちにそのことはまだわかりません。
 サイコロとレリーフのことだけ、伝えるといいでしょう。

出目 アイテム
スクロール(巻物)
珍奇品(宝石やルーンストーン)
触媒アイテム(粉やかつら、縫い針)
ポーション(飲み薬のビン)
装身具(指輪やネックレス)
魔化アイテム(剣や鎧)


廊下の向こうにある扉のメッセージ

 それぞれの扉そのものには罠はありません。鍵もかかっていません。
 開けると、空中にくちびるの幻影が浮かび、おのおの以下のメッセージをアナウンスします。若い女性の声です。

「ここは図鑑の中。仮想空間です。製作者のトラブルで誤作動する場合があります」
「アイテムを実際に体験できます。危険な体験もあるので注意ですよ。リセット権を駆使してね」
「本書を編纂したのは万記の魔術師バナシアです。彼女はいま……ビーッビーッ(警告音でかき消されます)」
 ⇒(後述の魔術師バナシアが同行している場合、バナシア本人が以下の台詞を口にします。ここに入らずとも、適切な場面で話させてかまいません)
「あ、これは私のくちびるですね。そうでした! 私は万記の魔術師バナシアで……事典の編纂をしています。それが仮想現実作成中にトラブルがあって……ええと……探索を続けるとわかると思うんですが」
「ここを出るには、5種類の異なる分類の品を1つずつ像に与えてくださいね」
「扉のゴーレムは与えられた品を使って、ヒーローに試練を与えます、打ち倒すのを楽しんでください」
「ここで得た一つの品だけは、現実空間に持って出られますが、入った時より人数が増えると出来なくなります。1人置いていってください」


警告アナウンス

 以下は、この迷宮内で、いつでも起こりうることです(リセット権に関するアナウンスを聞く前でも)。
 ヒーローが、重要な判定に失敗した場合、以下のアナウンスが聞えてきます。

 「あなたのリセット権を行使しますか?
 本施設1回利用中、1人1度のみ使用できます」

 リセット権を行使すると宣言した場合、サイコロを1度だけ振り直すことができます。
 リセット権が使えるのは、失敗した本人だけです。

7角形の部屋でのイベント:バナシアの登場

 どれかの扉から出て、その向こうを探索したら、一度、この部屋に戻ってこないと、他の部屋に向かえません(部屋相互をつなぐ通路はないので)。
 2か所を探索して、その後に、7角形の部屋に戻ってきたら、イベントが発生します。
 メガネをかけた若い女性が、彫像の前に倒れているのです。
 彼女は記憶を失っており、どこからここにまぎれこんだのか覚えていません。
 同行させるなら、扉の先の部屋で発生するイベントに変化が起こるかもしれません(と、ディレクターはヒーローに告げましょう)。
 彼女が記憶を取り戻す方法は、基本的には「3」の扉の向こうのアナウンスを聞くか、ヒーローたちが「きみの名は万記の魔術師バナシアではないか?」と尋ねることです。ヒーローたちが既に3に行った後で、再訪する判断をしたり、思い至らないなら、ディレクターが独自に(いずれかのアナウンスを聞いた時でいいでしょう)、彼女が自分の素性(バナシアという名とその真実)を思い出すようにしましょう。

・バナシアの真実

 彼女は、この仮想空間百科事典の書を編纂していた魔術師、万記の魔術師バナシアです。彼女を連れて、この空間を出ることで、暴走を完全におさめることができます。

 ディレクターは、彼女をヒントを与える役、お助け役として使ってください。また、バナシアが同行していれば、3度だけ好きな呪文を使って、ヒーローたちを手助けしてくれます(ただし、戦闘には参加しません。彼女自身は、罠にかかることもありません)。

扉の向こう側

 7角形の部屋にあるそれぞれの扉は、開けると短い廊下があります。そして状況を知るアナウンスがあり、廊下の突き当りにある部屋で、それぞれの分野のアイテムをランダムに入手できます。
 1、2、3の部屋の廊下は、モンスターがランダムに出現してゆく手をはばみます。
 4、5、6の部屋の廊下は、大げさな罠が仕掛けられています。

◎ 1:スクロールの扉の向こう

★廊下
 モンスター1体が、ランダムに出現し、倒さないと先に進めません。
 モンスター事典のランダム遭遇表のどれを使うか(どういう地形に変化するか)を、まずランダムに決定します。それに応じて、廊下の状況がジャングルや海などになることもあり、そこにふさわしいモンスターが出現します。
 他の廊下とランダム表の結果が同じだった場合、無視して振り直します。
 望むならリセット効果を誰かが使い、ランダム表の結果を振り直してもかまいません。
 また、代表者1人が運だめしに成功すれば、一旦逃亡して、7角形の部屋に戻れます。また入ると、あらためて、地形から決め直します。
 廊下を7角形の部屋に戻る時は、モンスターは出現しません。
 セッションでは、周囲が平原に変化し、凶暴な犬が出現しました。PCが犬を飼っていたので、その親族の犬として戦闘を回避しました。

★ランダムスクロールの部屋
 入るとすぐ、透明な壁に遮られます。向こうには無数のスクロールが置かれていますが、どうしても壁を破れません。テレポートするような魔法も効果がありません。
 ただ、壁の手前に縦横高さが50センチほどの箱が置かれており、上面には、ちょうど銀貨1枚が入るサイズのスリットが開いています。そして、箱の横には、スロットマシンのようなレバーがあります。

 銀貨を入れてレバーを引くと、スクロールが1つ、壁の手前に出現します。この箱は、以下ガチャと呼びます。
 箱の隣には、両替機と書かれた別の箱があり、金貨1枚を入れると銀貨9枚が出てきます。
 どのスクロールが出るかは、『アルカナ1』掲載のランダム表を使いましょう。モンスター召喚系のスクロールが出てしまった場合、そのモンスターが即座に出現し、戦闘になります。スクロールは入手できません(もしくは使い終わった空スクロールとしてもかまいません)。

◎ 2:珍奇品の扉

 こちらは「1 スクロール」の扉の向こうにある廊下と部屋と同様になります。
 モンスターに変化するような品がガチャで出た場合、そのままその怪物と戦闘になります。
 セッション時には、遭遇表で地形が「海」に変化し、溺れそうになりましたが、バナシアを連れていたので、彼女の救いでことなきを得ました(複数人を泳げるようにするのを1回の使用と処理しました)。モンスターの出現もあわせて処理しました。
 ガチャでは、携帯如意棒、呪いのロケット、壺のクモ男が出現し、クモ男と戦闘しました。

◎ 3:触媒アイテムの扉

 1,2の廊下と部屋と同様です。
 セッション時、廊下では「廃墟」の「スケルトンウォリアー」が出現し、戦闘して勝利しました。ガチャでは火酒のポーション、単眼鏡、黄金の独楽が出現しました。

◎ 4:ポーションの扉

★廊下
 ここには『グリムトゥースのトラップブック』22頁掲載の罠をアレンジしたものが仕掛けられています。
 まず、扉の前に立つと以下のものが感じ取れます。
「音:ぼこぼこと泡がはじける音」
「匂い:刺激臭」
 廊下は、黒い磨かれた床になっています。3mほど行った先には、横壁は左右の壁いっぱい、縦幅は1.5mの溝があって、匂いはそこからただよってきます。溝の向こうには、また廊下が延びています。
 ジャンプして溝を飛び越えようとすると、着地側に、透明で頑丈な壁があり、激突して溝に落ちます。溝には酸がたたえられており、落ちると1d点のダメージを受けます(トラップブックなら死にますが、さすがに手加減しました)。
 跳ぶ前に、周辺をよく探すと(《感知》-2に成功すると)透明壁の開閉スイッチが見つかります。

★部屋
 ポーションがランダムに出るガチャが回せます。
 また、酸の溝が渡れるよう、溝の上に渡せる板が置いてあります。

◎ 5:装身具の扉

 ここには『グリムトゥースのトラップブック』49頁掲載の罠をアレンジしたものが仕掛けられています。
 廊下は、突き当りの扉まで、黒と白の市松模様の床になっています。
 黒い部分の真上、天井には、ことごとく小さな穴が開いているのが、見ればわかります。実際に足を踏み込むと、頭上の穴から毒矢が飛んできます。ただし、狙いは外れます(たまたま外れた、古いから外れた、と演出してもいいでしょう)。
 黒を警戒して、白をゆくことを選べば、最初の3列は大丈夫です。4列目以降の白い部分は、踏んだ瞬間、ずぼっと抜ける落とし穴です。10m落下して、槍に刺さります。体力点を2d点減らします(死んでしまうようならリセットで、やりなおせるとしましょう)。
 踏む前に調べれば、抜けることはすぐわかります。

★部屋
 同じくガチャが引けます。

◎ 6:魔化アイテムの扉

★廊下
 ここには『グリムトゥースのトラップブック』31頁掲載の罠をアレンジしたものが仕掛けられています。
 廊下が2mほど伸びて、その先は急激にくだり、たたえられた水の中に消えています。
 前を見ると、10mほど先で水面からまた廊下が表れています。
 水中には、モンスター事典にも記載がない混沌とした海洋生物のシルエットが見えています。
 そして、天井からは、ふりこのように渡れるフックつきロープがたれさがっています。掴まれるように、ロープの先端は、ヒーローたちが入ってきてすぐの壁に固定されています。
 一見すると、これでアクロバットのように渡ることを示唆しているようですが、実際には、天井でロープを固定している滑車がもろく、ちょうど水の真上で、はずれて落ちます。水中の怪物は、なかば幻影のようなもので戦闘しようにもダメージは与えられません。ディレクターが定める適切な判定に成功すれば対岸に這い上がれますが、それらの判定に失敗するごとに1d点のダメージを受けます。
 渡った先にスイッチがあり、押すと橋がせりあがってきます。
 部屋にはいつものガチャがあります。

クライマックス

 5つの品を渡すことで、彫像は動き出します。
 与えた品をディレクターが解釈して、彫像を強くしてください。
 基本的な性能は、技術点9、体力:12です。特に効果がないものでも、技術点を強化したり、アイテムにあわせた特殊能力を持たせましょう。スクロールがあれば追加で魔法を使えるようになり、ポーションの効果を受けることもできます。ヒーローたちがクレバーな選択をすれば、彫像の能力にペナルティを与えて下さい。
 戦って勝利すれば、外への通路が開きます。
 手にした宝のうち1つだけ、外に持ち出せます。
 この宝には「バナシア」も含まれます。
 ヒーローたちの選択にあわせて結末を演出しましょう。もちろんん、連れ出してもらったバナシアは、ちゃんとお礼をします(高額の現金や魔法の品など)が、書物の中にいる間は、そのことはわかりません。
 また彼女は、さまざまな魔法の品を収集しています。今後『アルカナ』を使ったシナリオのスポンサーになってくれるでしょう。

・セッション時は以下のような強化を行いました

 くちばしに、聖宣のスクロール。効果なし。
 腹部の空洞に、静けさのポーション。ダメージのダイス-1のペナルティ。
 右手にマントを捧げ持ち、技術点+0.5。
 左手に珍奇品のモノクル。技術点+0.5。
 尻尾に呪いのロケット。効果はなし。