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安田均の「ゲーム日記」 第4回 (1998年6月30日版)


 開店休業から1年ちょうど。
 お久しぶりのゲーム日記だが、それにしても、この1年ほどのゲーム環境の変化にはちょっとぼくもびっくり(とは言っても、グループSNEでの仕事のやりかたは、そう変わってないんだけどね)。
 変わったのは、主に日本のRPGの(特に雑誌の)出版状況だろう。
 去年の9月にゲームクエスト誌が休刊。
 今年も、つい先頃には、電撃アドベンチャーズ誌が休刊。
 RPGドラゴン誌も、去年の6月に出た号を最後に、音沙汰なし。
 唯一の砦ともいえるRPGマガジン誌にしても、その内容は、ガンダムRPGとマジック・ザ・ギャザリングの雑誌といっても、だれも否定しないだろう。
 RPGはどこへ行った? もう、滅びたのか?−−と、ファンならずとも、思いたくなるような現状といえるかもしれない。

 でも、ぼくの観点からだと、ちょっとちがう。まあ、RPG5誌(旧ログアウトを含む)というのは多すぎたよなあ、という思いと、逆に、いや、RPG(特に雑誌)にとっては、これ以上そんなにひどくはなりませんよ、という思いの入り交じった感じ。リストラ流行りの昨今、そんなに悲観的になることはありません。
 えっ? 鈍いんじゃないかって。
 いえいえ。
 少なくとも、RPGドラゴン誌については大幅にグレードアップして(内容はかなりの部分、モンコレが入ってくるにせよ)、もっと刊行も早いペースで(月刊?)ニューバージョンがお目見えするはずだ。
 そこでは、ソード・ワールド、ガープスがかなりの力を入れてサポートされるだろうし、バトルテックやシャドウランの記事も(少ないかもしれないが)載るはず。
 そうそう、ガープスについては、ルールの完訳版(大判)や、G文庫で出ていた作品がドラゴンブックで出直したりもする。それに、いくつかの翻訳作品、SNEの新作ガープス・ドラゴンマークなどもそのうち登場する。いま、こちらでは、友野詳を中心にテストプレイにも熱が入っているので、乞うご期待だ。
ロードス島戦記T
RPGリプレイ集 呪われた島編

 ソード・ワールドにしても、ロードスとからめた「呪われた島ワールドガイド」が、近々登場するはずだし、リプレイやシナリオ(というより、スタートブックのようなもの)も着実に出ていくと思う。
 例によって、富士見書房の刊行はゆっくりしているけれども、もう少しファンの人は待ってほしい(それもこれも、モンコレが好調すぎて、編集側のマンパワーが足りないのが実情みたい−−1年たらずで、500万個(袋?)も出るなんて−−グループSNEとしても、痛し痒しだなあ)。
 雑誌刊行の時期は、まだこの時点でははっきりいえないが、できれば夏、よりしっかりしたものを考えているなら、それよりちょっと遅い時期、ということだろう。期待していてください。

 電撃アドベンチャーズにしても、じつは新たな雑誌を企画中ともきく。もっとも、旧TSR社とD&Dがあやしくなった2年くらい前から、アドベンチャーズはRPG専門雑誌ではなくなっていたので、今度の新雑誌もRPGの記事はそんなに多くはないだろう。だけど、グループSNEの関係しているクリスタニアや央華封神、アースドーンなんかについては載るかもしれない(こちらについては、流動的)。まあ、まちがいないところで、央華封神TCGのサポートやボードゲームの記事は載るだろうね。

 しかし、ゲームの出版(なかんずく、その雑誌)というのは、むずかしいみたいだ。これはなにも日本に限ったことではなく、アメリカでも同じ。いま現在、向こうでRPG雑誌というのは、ドラゴン誌(RPG記事)とダンジョン誌(シナリオ中心)、それに、見た目のさえないシャディス誌くらい。かっこよかったスティーブ・ジャクソン・ゲームズ社のピラミッド誌はオンライン雑誌に移行してしまった。イギリスでもホワイト・ドワーフ誌くらいだろうか。それもドラゴン/ダンジョンは、ほとんどAD&Dの記事だし、ホワイト・ドワーフはメタルフィギュアの雑誌に近い。

INQUEST
 むしろ、TCGの雑誌から出発したインクエスト誌の方が、一般的なRPGの記事を載せていて、普通の(濃くない)人にとってはおもしろいくらいだ。ぼくもインクエスト誌はお気に入りで、その野放図なユーモア感覚は、ちょっと前のナショナル・ランプーン誌みたいで、とにかく可笑しくて楽しい。

 例えば、‘史上最強のTCGは何か?’といったコラムがある。なんだろうかとみると、いま向こうで出ているそれなりに著名なTCGを16ほど並べて、高校野球みたいなトーナメントをやろうというもの。1回戦は、マジックVSミソス(クトゥルフもの)、スターウォーズVSレジェンド・オブ・ファイブ・リングス(あやしいジャパンもの)みたいな対戦になっている。こいつはすごい、どんなゲームで決着をつけるんだろうと読んでみると、なんだかよくわからない解説中継記事で、(サイコロでも振ったのか)2回戦にマジックとスターウォーズが進んでいるではないか。なんとオバカな企画−−でも、おもしろい。結局、優勝したのはマジック。おい、これじゃ‘史上最強’ではなく、‘市場最強’のTCGのまちがいじゃないかと思ったけれど、まあ、冗談、冗談。そのセンスがいいんですよ。

 一方でRPGについては、毎回おもしろそうなものを精力的にピックップ。「ブループラネット」とか、「トリニティ」とか、最近多いSFRPGにはぬかりなく目を配っている。
 今度出るニューRPGドラゴン誌なんかも、こうしたRPGとTCGをうまくクロスさせてある雑誌になればおもしろいと思うんだけれど、もう少しマジか、売れ線指向なんだろうな、きっと。




ということで、TCGの方に移ろう。

 じつは、このコラムが1年も期間があいたのは、モンコレ(モンスター・コレクションTCG)が去年の9月に出て、おかげさまでかなりのヒット。で、そのフォローに、必死だったこともある。Q&A、解説書、小説、コンベンション、もうなにがなんだかわからないうちに、半年ほどが過ぎてしまっていた。
 そして、TCGというのは、一つ出るとあとがまた大変なのだ。基本のルールは変わらないが、カードごとにちょっとしたルールの味付けがねずみ算式に増えていく。テストプレイというのも、それにあわせて量が増える。RPGも似ているといえばいえるけど、こんなに拡張版ごとにドカンドカンというほどではない。
「古代帝国の遺産」は、最初のモンコレでまず450枚クラスのものを作り、それを削っていたのでまだ少し楽だった。つまり、一部のカードは最初からやりこんでいたこともあり、拡張版としては早く完成できたのだが、そのつぎとなるとかなり時間をとる。
 それに、カードの種類が増えて、枚数が大変になっただけではない。
 第2弾の「魔道士の黙示録」になると、「モンコレ基本セット」からすぐに入ってくる人と、「モンコレ基本セット」+「古代帝国の遺産」に加える人の2通りを想定してテストプレイしないといけないのだ。世の中、カードをすべて集める人ばかりじゃない。新しい人はやっぱり第2弾にまず目がいって、それに必要なもの−−基本セット−−となる人も多いだろうからね。
央華封神TCGカード
絵師 安彦良和さん

 とはいうものの、この第2弾でモンスター・コレクション、アイテム・コレクション、スペル・コレクションと、もともとの解説書3部作に該当するものが揃うわけだから、モンコレTCGでも初期完成形のつもりでこちらは作っている。枚数は合計680枚くらい(666枚ならかっこよかったのになあ)。知らない人がみると、驚くべき量かもしれないが、ぼくがマジックにハマって本当におもしろいと思ったのが、ちょうどこのくらいの枚数のときだった(ああ、なつかしの、リバイスト、ダーク、フォールンエンパイア、アイスエイジ、よ!)。
 モンコレもこの辺りで、第1期のいちばんおもしろいときを迎えるはず。はじめるのなら、これから夏にかけてだと思うけどね。

 それとTCGなら、これも3年をかけた央華封神TCGが、ようやくリリースの時期を迎える。
 こちらはモンコレよりも、もっとストーリーを意識した、ある意味でRPGファンにもなじみやすいゲームになっていると思う。
 メデイアワークスさん総力をあげてのイラストはすばらしい出来だと思うし、ゲームも新しい形なので、ぜひ試してもらいたい。裏成功の醍醐味は、こっちでも健在だぞ。(「SNEニュース」にて央華封神TCG情報掲載中)




 と、まあ、ここまではゲーム日記といっても、仕事に関係のある表日記の部分。

 これ以後の裏日記は、もちろんあれ、ドイツ産のおもしろボードゲーム(カードゲームを含む)なのだ。
 これだけは、ホント、やめられないねえ。40過ぎてからの趣味は身を滅ぼすというけれども、若いときから好きだったものが、死んだと思っていたのにどっこい生きていた、それも、以前にまさるパワーを身につけて甦っていたと知ったなら、これはもう病膏盲ですぜ。
 なぜ、ドイツではこうもボードゲームが盛んなのか−−近頃では、この謎が頭にこびりついて離れなかったのだが、この前見たホームページで、当のドイツ人が「去年、ドイツではボードゲームのコンベンションに参加した人数は30万人だったそうだ。しかし、周りの諸国ではそうでもないらしい。なぜ、われわれがこうもボードゲームが好きなのか、よくわからん」と書いていたので、思わず苦笑してしまった。
 まあ、結局、子供のころから、大人が家族と遊んでいるからなんだろうね。
FANG DEN HUT!

 その証拠に、「帽子捕り」FANG DEN HUT!という、ちょっと子供向けの(大人でも楽しく遊べる)ボードゲームが、今年出てから70年で、2500万セットを売ったという記事も載っていた。
 ぼくが無知なんだろうが、こんなあまり聞いたことのないゲームが年間30万セット以上ずっと売れ続けるというのもすごいが、言葉を変えるなら、こうしたゲームを出し続けてきたラベンスバーガー社というのもすごい。こりゃもう伝統文化ですよ。
 アメリカにもパーカー・ブラザーズ社やミルトン・ブラッドレー社など名だたるところは多いが、結局いまはハスブロ社が資本的に全部統合してしまった。こうしたやり方だと、めざすのが売れ行きだけになるんだね。ゲームの匂いがしない。
 ラベンスバーガー社も今年は、潰れかけたFXシュミット社を買い取ったり、新興のベルリナー社を買い取ったり、ドイツのボードゲーム界を独占するのか、といったことを言われつつも、そこからしっかりといいゲームを出して、ドイツゲーム大賞に何点か送り込んでいる。
 ある意味で、ドイツのボードゲームの歴史は、ラベンスバーガー社の歴史ではないかという気もしてくる。いまはもちろん、いろんなゲーム会社が参入しているにせよだ。

 そういえば前回このコラムで書いた、アメリカへのドイツゲームの進出も、かなりの成果を収めつつあるようだ。いまでは、2〜3社がドイツボードゲームのきわだったものをつぎつぎ出して、「カタン」や「チグリス・ユーフラテス」、「テイク・イット・イージー」などが結構売れているみたい。
 おもしろいのは、アメリカではこうしたゲームに‘ファミリー・ストラテジー’という分野レッテルを貼っていること。
 家族用戦略ゲーム? 何だ、そりゃ?
 ま、それだけ、こうしたボードゲームが‘名付けえぬもの’という新しさを持っているということなんだろう。

 なんだかこう書いてくると、ゲーム全般は自動車に似てるような感じもあるなあ。規模はそりゃずっと小さいけれども、ドイツ、アメリカ、日本となると、車だね、これは。イギリスはかつての栄光はなかなかのものだけど、やっぱりダメだし(個人的には、ロールスロイスはBMWに買収してほしかった。ワーゲンじゃ大衆車だし、なんだか成り上がりに見えてしまうぞ)。

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