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TOP > ユーザーコンテンツ > 著者インタビュー > 『ソード・ワールド2.0』メイン・スタッフ インタビュー(2008年09月)
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『ソード・ワールド2.0』
メイン・スタッフ インタビュー

 今春『ルールブックT』が発売されて以降、怒涛の展開を見せていた『ソード・ワールド2.0』
 この8月には『ルールブックV』まで発売を終え、ついにその全貌をあらわしました。いよいよトップスピードに加速し、これからも一段と充実した展開が予定されています。
 そこで、今回は『ソード・ワールド2.0』に関わる4人のメインスタッフに個別インタビューを敢行。
 作品への関わりから、それぞれのこだわり・野望まで、存分に語ってもらっています。『ソード・ワールド2.0』のこれまでの流れ、そしてこれからの未来が垣間見えるはず。
 メインスタッフ4人へのロング・インタビュー。お楽しみください。
2008年09月 発行
記事作成 江川晃


[ソード・ワールド2.0、参加へのいきさつ]

江川 というわけで北沢慶さんです。まずは、著者としてクレジットされている『ソード・ワールド2.0』(以下2.0)という作品において、どういう立場にあるのかを教えてください。
北沢 はい。巻末のゲームデザインというところに名前があるんですが、この言葉でいいのか、実は結構悩みまして。もちろん、僕自身がアイデアを出したり、文章化した部分も少なくないんですが、何をやったかと言われると、まずは、スケジュール含めたプロジェクト全体の管理だったなあと。
江川 いついつまでに、誰それに何をしてもらって、それをいついつまでに統合してまとめる、ということですね。
北沢 はい。ゲームの方向性を決めたのと、いろんなルールやデータ、設定などを最終的に選んで決めるのも僕の役割でした。
江川 なるほど。SNEの作品群のなかでもソード・ワールド≠ヘ特筆すべき大きなタイトルです。
北沢 もちろん。まぁ、それだけやりがいも大きいですし。
江川 最初の『ソード・ワールドRPG』(以下1st)という土台はありましたが…。
北沢 メインスタッフは僕、田中公侍、秋田みやび、藤澤さなえの4人で、あとはスーパーバイザーのお三方(安田均、水野良、清松みゆき)に意見やダメ出し、時には方向修正をしていただくかたちでした。一番最初、どういうゲームにしていこうかという段階からディスカッションしつつ、僕が素案を練りあげていった感じです。
江川 メインスタッフ、残りのお三方は?
北沢 素案やディスカッションで出てきたアイデアを、バランスを取りつつ具体的にルール化するという点を田中公侍にやってもらってます。ワールドに関しては、僕が最初に考えてきたのを、秋田みやび、藤澤さなえの2人に味つけしてもらったり、刈りこんでもらったり。ほんとに、延々と議論しながら進めてきましたね。
江川 なるほど。システムとしては、オリジナルの『ソード・ワールド』という母体はあったにしても、2.0の大まかな部分は北沢慶のなかにあったもの、ということですか。
北沢 そうですね。2.0で世界を新しくすることは、企画の一番最初の段階で決まっていたので、それでなおソード・ワールド≠フ名を冠する理由ってなんだろうという、その答えを導きだすのが一番大変でした。
江川 立場としては、一番大変なポジションですよね。
北沢 んー、そうですね。なので、お叱りのお言葉は北沢慶まで。で、お褒めの言葉は北沢と素晴らしい仲間たちへ(笑)。……まあ、正直、死にそうと思ったこともあります(笑)。
江川 企画が立ち上がったのは、いつ頃ですか?
北沢 だいたい2年ちょっと前ですね。はじめて会議に参加したのが、2006年の6月くらいです。それ以前に1stのバージョンアップを行なう話は出ていまして、具体的なスタッフが固まったのがその頃のはずです。
江川 それで、正式発表になったのが去年の夏のJGC。その間、1年ほどあったわけですが、メインスタッフが決まっていったいきさつは?
北沢 1stの頃にリプレイを担当していたこともあって、引き続き2.0でも活躍してもらいたいということで秋田さんと藤澤さんは、早々に決まりました。システムも、清松さんから誰がバトンを受け継ぐのかということで、『ゲヘナ』などの実績も考えて田中君がいいだろうと。で、最後、誰が企画を取りまとめるのか、という話になったときにお呼びを受けまして(笑)。
江川 じゃあ、おまえがやれ、と。
北沢 そうです。で、はい、と(笑)。
江川 おととしの段階で、主要なスタッフはすべて決まっていたわけですね。
北沢 はい。
江川 あらためて携わったスタッフを見ると、メインの4人は1stを実際にユーザーとして遊んでいた人たちになるんですよね。
北沢 そうですね。確かにソード・ワールド・チルドレン≠ナすね。ソード・ワールドで育ってきた人間ばかりです。

 抜擢≠受けた田中公侍が明かす、よもやま話。

田中 この企画が具体的に立ち上がる前、ソード・ワールドが20周年で版上げを考えよう、という話が社内で出てたんです。そのとき同僚や何人かの先輩方を相手に、ただの版上げじゃ意味がないですよ、と喰ってかかったことがありまして(笑)。そうしたら、その後、打ち合わせに顔を出してみないか、という話をいただいたんですよ。
江川 ほほう。
田中 打ち合わせの席で、いろいろ意見を出したりしていくうちに、じゃあ、おまえやってみるか、という感じで参加させてもらいました。
江川 もちろん、いままでやってきた実績があったからこその抜擢だったと思うんですが、ソード・ワールドのシステムに手を入れるのは、相当の熱意がなければ勤まりませんよね。
田中 打ち合わせの席では『ええ度胸やな』と言われました(笑)。ただ、ソード・ワールドという作品に関わりたいという気持ちはずっとありましたし、それが大きく改まるときに深く関われないのは嫌だったので。なんとかスタッフには加わりたい、とは思ってました。
江川 今回のメインスタッフは、ソード・ワールドをユーザーとして実際に遊んできた人たちなんですよね。ユーザーとしての目線が、今回の2.0に生かされていると思うんですが。
田中 そうですね。1stはこうだったけど、2.0ではこうしよう、こうしたいという話は、スタッフ全員が集まるコンセプト検討の段階から、ずっと話しあってきました。2.0で新しくなった部分は、確かに1stを遊んできて、いろいろ思っていたことがいっぱい詰まってますね。

 世界観およびリプレイ担当の秋田みやび、藤澤さなえは、1stから引き続く重要な戦力として、立ち上げの段階からスタッフに指名されていた。
 
秋田 企画が立ちあがったときには、もう打ちあわせの席に座っていまして、参加が決まっていました。こっちも『いっちょこい』ってなもんです……嘘です。大きいタイトルなので、身が引き締まりました。
藤澤 企画が立ち上がった最初から、リプレイを複数展開しようという話になっていまして。1stの段階でリプレイを担当させてもらっていたこともあって、メンバーに加わることになりました。ただ、いままでのアレクラストとは違う新しい世界を立てていこうということになって、世界観の構築に加えてもらうことになったんです。


[4人それぞれの関わり]

江川 田中くんからは、プレイヤーとして遊んでいた頃に思ったことを、今回の2.0に盛り込んでいったいったという話を聞けたんですが、そのあたりで何か北沢さんなりの思いはありましたか?
北沢 そうですね。もちろん1stは大好きなゲームで、SNEに入社する前からよく遊んでました。でも、非常に生意気な発言ですが、僕ならこうするのにな、と思うところはあったわけです。もちろん、水野さんや清松さんがこだわりを持っておられた部分もたくさんあるので、そのなかでどこが譲れないところで、どこを変えてやると遊びやすくなるのかというのをすごく考えましたね。1stはすごく完成されたシステムで、自由度も高くて衝撃を受けたんですが、自分がやりこんでいくうちにもっと自由度が欲しいなと感じるようになって。なるべく、より自由度を広げていこうというのは意識していました。プレイヤーのわがままを少しでも再現できるものにしたいな、というのがコンセプトの根っこにあります。
江川 わがままというのは、こういうキャラクターをやりたい、ということですか?
北沢 はい。
江川 ちょっとシステムの話になってしまいますが、同じファイター≠ナも、少し差が出るとか。
北沢 ええ、攻撃的なのと防御的なのと。あと、僕のゲーム仲間に変わり者がいまして。どのゲームでもドワーフしかやらないという(笑)。で、彼が言うには、なぜドワーフは魔術師ができないのか、と。まわりから何と言われようと譲らないわけです。まあ、そんな話をいろいろ聞いていて、『あ、それなら向いてる向いてないは抜きにして、やりたいという人がいるならやらせてあげられないかな』と思ったんです。
江川 なるほど。ゲーム的な有利不利は置いておいて、プレイヤーがこだわりを追求していける部分を用意したかったと。
北沢 そうですね。
江川 今回、1st発売から20年、TRPGの進化がちりばめてあるように思うんですが。たとえば、セージやレンジャーなど、1stでは少し脇に引いていた感じの技能が今回ゲーム中で一層生きています。
北沢 そうですね。パーティのなかで誰かに持っていて欲しい技能なんですが、自分ではなかなか取りにくいという感じでしたよね。そこで、その技能を持つことによるメリットを大きくしようと思ったわけです。ルールブックIIでは、セージ、レンジャー、スカウトという技能にさらに仕掛けを入れましたし。
江川 他にも、いままで敏捷度順の行動だったのが、敵・味方の先攻後攻制になったり、成長させにくかった能力値がどんどん伸びるようになっているとか。
北沢 それもやっぱり、ユーザーとして遊んでいた頃からいろいろ考えていたことです。たとえば、能力値については、いろいろ紆余曲折があっていまの成長方式に落ち着いたんですが。1stの能力値は、筋力みたいに6で割った端数があっても意味のある能力値と、知力みたいに、あまり意味がない能力値があるんですよね。それなら、うまくいけばいま17の知力が18になるかも、という感じで、ブレイクに少し足りない能力値により意味を持たせたかったんです。最初は能力値を1点失うことで凄い効果を得る、みたいな意見も出たんですが、能力値を減らすより増やすほうが遊んでて楽しいじゃないですか。で、どのタイミングで増やそうかという話になって、なら1回のセッションで1点上がるくらいで考えてみようと。ただ、狙いの能力値がバシバシあがると、それはかえってつまんないだろうと、みんなで話しあって。せっかく能力値が6つあって、6面体サイコロを使うんだから、ちょうどええやろ、と。伸びる能力値もサイコロで決めるといういまのかたちに落ち着きました。

 北沢のコンセプトを受けて、実際のシステムに携わった田中公侍も語る。

田中 能力値の成長については、アイテムでブーストさせる案や、能力値の成長に必要な経験点を下げる案なんかが出てたんですが、どうせなら自動的に上がるようにしましょう、それも能力値を狙って伸ばせるのは面白くないので、サイコロ振りで決まるようにしたいな、と。サイコロを振って、出目が決まるまでの瞬間を楽しみたい、っていうのがずっとあるんですよね。
江川 いままで脇に引いていた技能もずいぶん使いでがよくなりましたね。これは、コンセプトへの肉づけの段階で膨らんできた部分なんですか?
田中 そうですね。その技能で活躍する瞬間をもっと出していきたいという感じです。
江川 先攻・後攻制については?
田中 敏捷度順での行動は、僕自身とても美しいと思っているんですが、敵と味方の行動順が入り混じるので、突き詰めていくと行動を1つ1つ考えていかないと失策が起こるよなぁと思ってたんですよ。なので、敏捷度の有利さは残したうえで、なるべく遊びやすく出来ないかと考えていって、いまのかたちができあがっていきました。そこからテストプレイを経て、スカウト技能がからむようになっていきました。
江川 やっぱりユーザーとしての視点が活かされている気がします。
田中 いままで遊んできて、敏捷度1点の差で戦況が変わる、というのを何度か経験してきましたので。もちろん、そういう要素を踏まえて戦術を考えるのも楽しいんですが、それは、『ゲヘナ』がありますし(笑)。2.0では、それよりキャラクターをストレスなく活躍させてあげたい、プレイヤーがやりたいことができなくなくなることはなるべく少なくしたいな、という思いはありました。

 ふたたび北沢慶の話。

江川 バランス的にも思い切った部分だったと思いますが。
北沢 案ずるより生むが易しで決断したところはあるんですが(笑)。当然、ずっとテストを繰り返して、いい感じに収まっている感触はあります。
江川 さらに技能、種族ともに増えています。これも、やはりプレイヤーの選択肢を増やすということですよね。
北沢 もちろんそれも大きな理由なんですが、やはり2.0を送りだすときの新味の部分として強く意識しましたね。1stは全部で8つの技能があって、それでもうかっちりと完成されているんですが、もう少しバリエーションがあってもいいかな、と考えていたんです。1stは6人パーティが基本で、8つの技能を6人できれいに割り振れるようになってるんですよね。で、今回は1つのパーティでは、すぐにすべての技能を網羅できないようにして、また違うパーティで遊んでもらえるようにしたい、というのもコンセプトの1つでした。
江川 ただ増やせばいい、というものじゃありませんしね。世界観と絡んでくる部分でもありますし。
北沢 そうなんです。これはほんとに裏話になってしまいますが、ぎりぎりの段階までエルフとドワーフはなくそうかという話もあったんです。
江川 ほう、エルフとドワーフがいない世界?
北沢 オーソドックスなファンタジーを目指しつつ、そこに独自の色あいを乗せていこうというコンセプトがあったんです。そこで色づけの意味で、この2大種族をあえて外してみてもいいんじゃ、という意見がでたんですね。で、しばらくエルフとドワーフなしでテストしていた時期があるんですが、やっぱりオーソドックス≠ニいう部分では彼らが必要かなと。
江川 偉大な異種族ですね(笑)。
北沢 まったく(笑)。ただ、以前と同じまま置くんじゃなくて、これまでの雰囲気や設定、エルフやドワーフというキーワードを生かしつつ、独自性を出していけたらな、と。
江川 今回、エルフは水≠フイメージですね。
北沢 はい、ドワーフは火≠フイメージに寄せていってます。
江川 新種族はどんな感じですか?
北沢 新種族は、最初かなり僕の趣味の部分を盛り込んで(笑)、いくつかの案を出しました。そのなかから、ルール的に扱いが難しくなりそうなもの外したり、他のスタッフのアイデアを取り込んだりして練りあげていきました。

 改めて、他の3人にも振り返ってもらおう。

田中 はじまったばかりの、これから2.0の基本を決めていこうという段階では、スタッフ全員で意見を出しあいました。たとえば、1stをどこまで残すか、それこそレーティング表はどうするのか、という部分まで。僕もあれこれ意見を言いまして。そこで意見の取捨選択をして、土台が出来上がっていった感じです。システム的にも世界的にも。
江川 全員でコンセプトを議論した後、肉づけしていく作業ですね。
田中 そうです。なので、その土台があったので順調にいったと思います。みんなの考えを統一できてましたし。
江川 2.0では種族や技能が増えています。
田中 はい。そのへんは世界観と結びつく部分もありますし、こういうのがやりたいという話が出たときに、じゃあゲーム的にはこうやりましょう、とデータ的な部分を作っていく感じでした。コンセプトワークの段階で、北沢さんやスーパーバイザーの清松さんと数字の扱いや感覚を共有できたのが大きかったです。たとえば、全力攻撃で具体的にどのくらいダメージを増すか、なんていう部分で数字的には全然ブレなかったですし。

 
秋田 アイデア検討のときにいろいろ意見を言わせてもらったり、肉づけの段階で神様の設定を考えてみたり。わたしの立ち位置としては、そんな感じです。世界観作成と、ワールドでは南部――リプレイの舞台になってるんですが――を中心に担当しています。
江川 同じくワールド担当の藤澤さんとの住み分けみたいなのはありますか?
秋田 細かくどうこうというのとはちょっと違いますが、常に意識はしておいて、藤澤さんのほうでこういうのが出たから、こっちではこうしよう、みたいなのはありましたし、いまもあります。
江川 ルールブックIに合わせて、リプレイの第1巻が登場しました。発売時期については、最初から決まっていたんですよね。
秋田 はい。世界観の部分は、リプレイのことを意識しながら作っていくところはありました。

 
藤澤 大元のアイデアは北沢さんが出されて、わたしはこういうのが好きですとか、もっとこうしたいですとか、いろいろ意見を出す感じで進めさせてもらいました。
江川 ここを任せて、とかいうわけではなく。
藤澤 創世神話とか全体の世界とか、基本になる部分は北沢さんのアイデアがありまして。で、ルールブックに載せる地方を詰めていくときに、具体的な国の設定などの書き起こしをやらせていただきました。
江川 具体的な設定に関わった?
藤澤 そうですね。土台はありましたから、わたしはそこにいろいろ飾りつけをしていくような感じでしたね。マジックアイテムとか一般装備品、装飾品類とか。あと、ルールブックIのサンプル・シナリオも。
江川 なるほど。世界観を補助するフレーバー的なデータの部分を任されたわけですね。


[ここを見て欲しい]


 時間とも戦いつつ、製作は進行していく。そんななか、スタッフが注目して欲しいという思いを託した箇所をピックアップしてもらおう。まずは、ワールド設定の藤澤、秋田の両名の話から。

藤澤 出来るだけいろんな国を入れて、バリエーション豊かに広がりが出るようにしたかったんです。マップなんかも下書きを起こしたり。そういう基本的なところにもこだわったんですが、個人的に力を入れたのは装飾品類ですね。
江川 ほう。
藤澤 ゲーム的にすごく役に立つというより、プレイヤーが楽しめる部分で何かネタがないか、と思って、資料まで買ったりして(笑)。はじめてのルールブックの作業ということもあったので、ルールそのものより、たぶん気づかれないだろうなぁ(笑)、という部分でがんばろうと思ってやっていました。でも、1stのリプレイ(『ぺらぺらーず』)でGMを長くやらせてもらいましたが、実際はプレイヤーもたくさんやってきてるんです。それでキャラクターがイラストになったとき、自分のイメージとちょっと違うなと思うことがありまして。『いや、違うんだ、帽子かぶってるのがいいんだ』とか(笑)。そういうキャラクターの外見をこうしたいっていうのを、データやルールの上で反映できたらいいなと思って、かなり力が入りました。
江川 テストに入れてもらったことがありますが、確かに装飾品にはこだわってましたね。
藤澤 リプレイ(ドラゴンマガジン連載『たのだん』)でも、キャラクターのイラストにしっかり反映してくださいとお願いしてます。プレイヤーは、ゲーム世界でお金払ってるんです、と(笑)。
江川 なるほど。やはりプレイヤーの視点が生きていると。
藤澤 はい、それは大きいと思います。……ルールのテストなんかをしてるときも、それはプレイヤーにとって煩雑な気がします、とかいうのは結構言ってた覚えが。
江川 今回、種族や技能に目新しい要素が導入されてますが、それについては?
藤澤 ああ……それはもうタビットですね(笑)。タビットは、わたしが発案です! 大きく書いておいてください(笑)。
江川 (笑)
藤澤 タビットの命名は北沢さんなんですけど。新種族の1つは、足が遅くて頭がいいという能力値的な部分しか決まってなかったんです。何がいいだろうってみんな言ってたときに、ケモノの種族がいいと。ウサギがいいですって言ったら、秋田さんもそれがいいって賛成してくれて(笑)。でも、最初、それはウサ耳の女の子なの?って聞かれて、違います、ピーターラビットです、と(笑)。
江川 リアル・ウサギですと(笑)。
藤澤 ええ(笑)。推したのはわたしと秋田さんです。いろんなところで2.0のアピールや宣伝をさせてもらいましたけど、どこに行ってもタビットが話題になるので、してやったりって感じですね。

 
秋田 ワールドの設定で神様を何体か作ったんですが、それぞれに関係があっていいじゃん、と思って、これ旦那、これ奥さんとか設定してました。でも、ルールブックに収まりきらなくて、たくさん外さないといけなかったんですよ。ところが後になって、これリプレイでもう使ってるから外せないよ、という話が出てきて、編集さんにもちょっとご迷惑をかけたり(笑)。
江川 具体的には?
秋田 太陽神の奥さんのシーンさんとか。『たのだん』で登場していたので、外さないでーって言いながらゴリゴリ詰めこんでもらいました。
江川 神様の設定については、かなり秋田さんの意見が入ってるわけですね。
秋田 最初、神様には性格がなくて、もっとぼんやりした存在でいいんじゃという話があったんです。でも、そうすると個人的にはファンタジーの味わいが薄くなると思ったので、実在することにしましょうよとかなりバタバタ主張しました。
江川 具体的にかたちがあって、感情移入できて、と。
秋田 そうですね。
江川 今回、種族も増えていまして、藤澤さんはタビットについてかなりこだわったと言ってました。『ウサ耳種族?』と聞かれて2人して暴れた、と(笑)。
秋田 言いましたねぇ。バニーガールちゃうねん、ふかふかやねん、と(笑)。それはもう強硬に。
江川 他にこだわりの点があれば。
秋田 設定の最初の段階では、プリースト技能はなくそうか、という話もちらっと出て。プリーストがいないのは、なんとなくソード・ワールドっぽくないと、だいぶ主張した覚えがあります。神官はやっぱりいて欲しいし、神様に関連してゴタゴタするのも楽しい部分だと思ってましたので。
江川 それも神様はやっぱり感情移入できるように人の姿をしているのがいい、と。
秋田 神がいる世界なら、ある程度、実在がはっきりしていて欲しいじゃないですか。あとは、自分にとってパっと思い浮かぶファンタジーはどんなものだろうということで、いろいろこだわらせてもらいました。北沢さんのアイデアにエルフは水、ドワーフは火のイメージというのがあって、打ち合わせでは反対意見なんかも出たんですが、わたしは『それいい』って、ひたすら賛成したり。
江川 メイン・スタッフは全員、ソード・ワールドを遊んでいた人たちで、それぞれソード・ワールドに対するイメージやこだわりがあったわけですね。

 改めて北沢慶に振り返ってもらおう。

江川 タビットは藤澤さんや秋田さんがこだわったようですね。
北沢 そうです(笑)。ウサギ種族ということはバニーかね?って聞いたら、えらく叩かれました。
江川 リアル・ウサギがいいんだと(笑)。
北沢 遊んでくださった方の反響を聞いて反省しました(笑)。でも、自分が提案した種族も結構生き残りましたね。ルーンフォーク、リルドラケン、ナイトメアは、ぜひやりたかった種族なので。
江川 もうひとつ、2.0で追加された名誉点のルールはどのあたりから出てきたものなんですか? いわゆる経験点とは違うものですよね。
北沢 そうですね。経験点やお金とはまた違う、冒険をしてきた足跡みたいな要素を入れたかったんです。新しいラクシアという世界では、冒険者は外敵を排除して、失われた文化を取り戻す義勇兵のような位置づけなんです。活躍すればそれだけ、世間の評価は上がっていきます。それを数値のかたちで反映して、たとえば自分専用の武器が贈られたり、自分の家を建てられたり、称号をもらえたり、ゆくゆくは自分の領地を持てたりと、ゲーム世界の人たちから評価されていくのは楽しいんじゃないかなと。
江川 そういう部分を、システムでちゃんとフォローしたかった。
北沢 ええ。たくさんプレイしてもらえば、名誉点もたくさん手に入るので、どんどんセッションしてもらいたいですね。たとえば経験点自体は少し控えめにして、能力値成長と名誉点でキャラクターを成長させていくと、同じキャラクターで長く遊ぶための選択肢になるんです。あと、オンラインのセッションというのも意識しています。たまたま一緒になった人がどれだけ名誉点を持ってた、という感じで話題を作るツールになれば楽しいんじゃないかと。
江川 なるほど。いわゆるテーブルトークで普通に遊んでいる以外のところにも使えるだろう、と。
北沢 そうです、そうです。
江川 そのあたりのアイデアはどなたの発案ですか?
北沢 名誉点については、コンベンションやオンラインなんかで知らない人とキャラクターを持ち寄って遊ぶときに何かできないかな、というところから、みんなで考えていった部分ですね。名誉点って剣のかけら≠集めるっていうかたちになってるじゃないですか。
江川 はい。
北沢 あれは剣のかけら≠いくつか集めると魔剣が完成する、というアイデアが最初にありまして。ただ、パズルみたいなかけらを集めていくのは、突き詰めるとクドくなりそうかなと(笑)。プレイヤー間でトレードとかできると楽しそうかなぁとも思ったんですが。
江川 ああ、楽しそうですが、マスターが大変そう(笑)。
北沢 そういう段階を経て、いまのかたちに落ち着きました。
江川 なるほど。では、具体的な部分で北沢慶が特にこだわった部分とか、他から意見が出ても譲らなかった部分というのはありますか?
北沢 うーん、いろいろ譲らなかったり、いろいろ折れたりしたような(笑)。……(しばし考える)そういえば、魔法使いのなかのマギテックの部分は執筆自体にも大きく関わりました。マギスフィアという魔法の発動体のようなものがあるんですが――最初は名称が定まらなくて万能道具箱≠チて呼ばれてた時期もあったんですが(笑)――2.0の新しい要素の1つとしてマジックアイテムを使ってあれこれできるっていうのは、やりたかったことの1つですね。(思いついて)あ、今回、複数部位を持つモンスターがいます。
江川 はい。
北沢 それはすごくやりたくて、なんとしてもシステム化するのだ、と(笑)。
江川 (笑)
北沢 『モンスターハンター』というコンシュマー・ゲームがいま流行ってますよね。
江川 ええ。社内にも愛好者がいますね。
北沢 あの大きなモンスターをみんなで協力してやっつける感じがすごくいいな、と思ってまして。それをなんとか表現したいな、と。
江川 なるほど。
北沢 それで大きくて強いモンスターを、どうすればもっと雰囲気を出して表現できるか、というのを考えまして、部位を複数持たせて、それぞれが1つのモンスターとしてデータを持っているというかたちになりました。
江川 ただ、数値が大きくなるのではなく。
北沢 はい。で、それをどの部位から倒していくのがいいか、という要素も加えています。たとえば、翼を持っているモンスターなら、まず翼を落として地面に下ろすとか、強力な範囲攻撃を持ってるモンスターなら、範囲攻撃を仕掛けてくる部位を先に倒したほうが楽になるとか。
江川 ゲーム的な楽しみを深める方向ですね。
北沢 ええ。

 北沢のこだわり、部位モンスターについて田中公侍の証言。

江川 北沢慶は、部位モンスターにこだわったと話してくれました。
田中 そうですね。『デカいモンスターは強くなきゃ嫌だ。デカいモンスターなのに、1回しか行動できないのは嫌だ』という主張が北沢さんからありまして。部位ごとに独立して攻撃してくるとか、頭は高い位置にあるので、まず胴体を攻撃しないとダメとかいうアイデアを聞いてすごいなぁと思いました。僕はデータの面なんかのチューンを担当したんですが、どういうふうに攻略するのかという筋道をプレイヤーに考えてもらうのは楽しかったですね。具体的な例を挙げますと、キクロプスは頭のHPを0にすれば倒せるんです。ただ、頭は回避が高い。頭の回避を下げるには、胴を倒さないといけないんですが、ここは防護が一番硬い。さらに、攻撃力が一番高いのは尻尾で、ここを倒せば敵の戦闘力を大きく下げることができる。さあ、どこから倒していきましょう、という感じで。やっぱりルール的な処理と数字の管理が一番大きな仕事だったと思います。

 また北沢慶に戻ってきて。

江川 元になる世界観は自分が出しているから、そちらについては他のスタッフの意見を聞くという感じですか。
北沢 そうですね。僕が『こんなのどう?』って案を出して、それがまぁ大抵とがった意見で、時にはみんなから叩かれたりして(笑)。いろいろ意見を聞いてまとめていくという流れでしたね。そのなかでとても大事にしたのは、ソード・ワールドとは何か?≠ニいう部分にも関わってくるんですが、『剣が創った世界、剣によって動いていく世界』というキーワードの部分です。ラクシアは剣が創った世界で、魔剣が世界の行く末にかかわっている、という部分から外れないようにというのは強く意識してました。
江川 ソード≠ニいう言葉に必ずどこかで結びついているようにしよう、と。
北沢 そうです。一番とがっていたときは、PCは全員魔剣使いという設定になっていた頃もあったくらいで(笑)。あとは、対立構造を明確にしたいな、というのもありました。
江川 蛮族≠ナすね。
北沢 はい。まずは蛮族退治というかたちで仕掛けを考えればいいですよ、という具合にわかりやすい倒すべき敵として設定してあります。
江川 はじめて遊ぶ取っつきの部分になりますね。
北沢 ええ。もっとも、突き詰めてみれば、蛮族もただの悪の集団ではなくて、彼らは彼らなりに生きているんだというところに行き着くと思うんですが。
江川 2.0の作業に取りかかったのが二年前。全体を組み上げつつ進めていかれたとは思うんですが、とりあえず一冊目のルールブックがこれで行けそうと目処がついたのはいつ頃ですか?
北沢 製作を開始した年の夏頃、2006年の8〜9月頃には、とりあえず遊べるかたちには持っていきました。
江川 それは、3冊のルールブックを通した2.0全体のお話ですか?
北沢 そうです。ただ、最初の頃はほんとの試作で、魔法も1stの魔法をそのまま流用してたりしました。いまのかたちまで持ってきたのは、そこから2007年の夏前くらいになりますね。正式発表の少し前にかなり固まった、という感じです。

 『ソード・ワールド2.0』では、ゲーム・ルールの立ち上げに連動し、早くからリプレイも進行していた。それを請け負った秋田みやび。

江川 リプレイでは、ワールドは、ここは好きにしていいから、と任されたわけですよね。
秋田 そうですね。いろいろ作りながらの作業でしたから、ワールドに関しては、あちらもこちらも未設定で。そんな中、あそこ(フェイダン)を作りながら進めようと。
江川 最初に全部を用意されていたわけではなく?
秋田 はい。ある程度は最初に作っておいたんですが、実際に遊んでみて、このあたりが欲しいなとなったら、そこを作って入れていってという。なので、最初は白地図みたいな地図ではじまってます。最初はざっくりとした感じで、冒険者たちが手探りをしながらあちこち回っていくというかたちで埋めていこうと思っていました。
江川 リプレイ1巻の段階では、地図は空白が多かったですよね。
秋田 もちろん、ある程度は作ってあるんですが、発見してもらう喜びを出したいな、と。


[3冊のルールブック]

 2.0はI〜V、3冊のルールブックで構成されており、最大レベルは15レベル。T巻以降、徐々にデータを積み上げつつ、上(レベル帯)にも、横(新種族、技能)にも幅を広げてきた。
 北沢慶に、改めてこの3冊を振り返ってもらおう。

江川 ルールブックはI、II、Vの3冊。各巻にはこういう内容が収められているという点を教えてください。
北沢 ルールブックIは、文字通り全体の土台となるものです。IIが最初の追加ルール集という感じです。種族と技能が2つずつ追加されて、レベルの上限も10レベルまで引き揚げられます。それに伴って7レベルから10レベルの魔法が収録されて、モンスターも高いレベルから低いレベルまで全体的に追加されています。
江川 ただ、レベルが引きあげられただけではない、ということですね。
北沢 はい。新たな種族と技能も追加されています。新しいエンハンサー技能とバード技能は、どちらも魅力的に仕上がったと思います。
江川 新しい種族というのは?。
北沢 リルドラケンという竜人族と、もうひとつはみなさんお待ちかねの(笑)グラスランナーです」
――リルドラケンの発案は北沢さんですよね?
北沢「はい。ここもこだわりと言えるかもしれないですね。非人間型種族を入れたいと思っていたんですよ。実はタビットが自分のなかでは予想外のかたちで入ってきたので、最初からタビットがいたら存在しなかったかもしれない種族です(笑)。
江川 これがIIに入ることになったのは、何か理由があるんですか?
北沢 種族ははじめから8種族用意して、そのくらいが認識しやすいだろうと思って進めていたんですが、分量の都合もありますし、すべてを基本のルールブックに入れることはできないだろうと。
江川 はい。
北沢 じゃあ、何をIIに回すかと考えたときに、姿が特殊なものとルールが特殊なものをIIに入れようということになったんです。
江川 ルールが特殊というのは…。
北沢 グラスランナーですね。2.0のグラスランナーはユニークな特徴を持っていまして、MPが存在しない。
江川 ゼロではなく、存在しない。
北沢 はい。パラメータそのものがないので魔法を使えないんですが、その代わり自分にかけられた魔法への抵抗に成功すると、効果を完全に消滅させるという特徴を持っています。
江川 いいですねぇ。やってみたいな(笑)。
北沢 ドワーフとグラスランナーが揃うと、なかなかすごいことになりますよ。魔法を撃ちこまれてまわりがヘロヘロになっても、あの2種族だけ平気な顔をしてますから(笑)。
江川 ルールブックVは、どのような感じですか?
北沢 Vでのレベルの上限を引きあげて、最終的に11〜15レベルまでをカバーします。
江川 15レベルまでいきますか。
北沢 いきます。レベル帯が上昇するので、モンスターをはじめとしたデータの補強がメインですね。かなり凄い世界です。もちろん上のレベルだけじゃなく、T〜IIのレベル帯についてもデータが補強されています。
江川 ハイエンドのレベル補強がVの役目ということですね。
北沢 そうですね。あと目玉の1つとして、ライダー技能という新しい技能が追加されて、それにともなって騎芸≠ニいう能力と、ライダーとは切っても切り離せない騎獣≠ェ登場しています。
江川 ライダー技能について、少し教えてください。
北沢 ライダーという以上、動物に乗っての騎乗戦闘が可能になります。それも普通の乗用動物だけじゃなくて、モンスターや魔動機までいけます。さらに弱点の看破はできませんが、セージ技能みたいに魔物の知識判定を行なうこともできます。騎獣に独立して攻撃させることもできるので、かなり強いですよ。製作時はいろいろ迷ったりもしましたが、なかなかいい感じに仕上がったと思います。
江川 名誉点の使い方も増えましたね。
北沢 NPCとのコネの部分ですね。キャンペーンをやるときには、重宝してもらえると思います。あと、ワールドの部分では人々の信仰の力や、その扱いについても少し触れてあります。テラスティア大陸北部の設定も載せてありますし、これまでどおりサンプル・シナリオ(10レベル対応)もついています。I、Uと遊びこんでくれた方々には、いままでと同じように入ってもらえると思います。

 ルールブックIIおよびVについて、田中公侍、藤澤さなえも語る。

江川 ルールブックII、Vと立ち位置は変わっていませんか?
田中 はい。ただ、レベル上限が上がっていきますので、データがピーキーになるぶん、やりがいも一段と増した感じです(笑)。レベルが上がっていくと、どうしても基本の固定値が大きくなります。そういうときでも、サイコロを振る意味が薄まらないようにというのは意識しましたね。
江川 ルールブックII以降でのおすすめは?
田中 新技能と新種族、というのはみんな言うと思いますので(笑)、自分的には戦闘特技ですね。
江川 新しいものが増える?
田中 そうです。一定のレベルになると自動的に覚える自動取得の戦闘特技が増えてます。5レベル以降に習得するんですが、かなり強いですよ。技能の取りかたを、いろいろ考えてみたくなると思います。
江川 Vについては、いかがです?
田中 TとIIの要素にさらに積みあげて、Vではさらにヒロイックな冒険ができるはずです。
江川 高レベルになると、派手で頭を使う戦いや冒険をして欲しいと。
田中 そうですね。キャラクターも10レベルを越えると、国家の行く末に関わってくるような存在ですからね。それなら、国の存亡に関わる巨大モンスターとかと戦って欲しいじゃないですか。

 
江川 藤澤さんは、II以降のルールブックについて、どのような関わり方をされてますか?
藤澤 やっぱりワールドや雰囲気出しの部分ですね。
江川 雰囲気出し?
藤澤 ルールブックIIのときに、どんな人生を送ってきたかを決める経歴表を作ったんですよ。Iにあった経歴表も楽しかったんですが、これに最初恋愛経験がない≠チて項目があったんですよ。それをまだ恋をしたことがない≠ノしてくれって、かなり強くこだわったんです。恋愛経験がない≠チて言い方は凄く硬いよって(笑)。その甲斐があったのか、ルールブックUでは考えてみてって言われまして。
江川 そこまで言うなら、やってみろと(笑)。
藤澤 そうなんです(笑)。でも、発売後のイベントでお客さんが経歴表振ったとき、『あ、俺まだ恋をしたことがないや』って言われて爆笑が起こったとき、心の中で『よっしゃー』って思いましたね(笑)。
江川 そのあたりのこだわりは、女性ならではですね。男だとなかなか思いつかないかも。
藤澤 でも、いざ自分で作れって言われたら、ずいぶん苦労したんですけどね(笑)。ああ、やっぱり大変なんだって。


[スタッフの野望]

 最後にメイン・スタッフ4名それぞれに、これからの野望を語ってもらおう。まず、田中公侍から。

江川 2.0というタイトルを通して、自分がやっていきたいこと野望を聞かせてください。
田中 野望ですか……(考える)。
江川 1stには20年の歴史があります。
田中 ずっと遊びつづけてもらう、という点なら、1stからの積み重ねもあって基礎はもちろん堅牢なんですが、これからも一層遊んでもらうための土台はできたという自信はあります。それに、たとえば実際に遊んでいる方の要望なんかにも臨機応変に対応できるようにして、これからも進化を続けられるようにしたいですね。あとは、たとえばオンラインであるとか、遊ぶときの形態についても意識していきたいと思っています。
江川 システム担当として、ここを遊んでね、という部分は?
田中 是非ともすべてのレベル帯で遊んでもらいたいです。
江川 キャラクターを高いレベルまで育てて欲しいということですか?
田中 もちろんそれもあるんですが、いろんな技能のいろんなレベルを体験してほしいですね。I、II、Vとレベル帯ごとに遊んだときの感覚が違ってくると思いますので、それをいろんなキャラクターで楽しんでもらえたら、と思います。是非ともルールブックは3冊揃えてください(笑)。あと『たのだん』ではGMはやっていますので、そちらもよろしくお願いします。


 次に秋田みやびと藤澤さなえ。

江川 2.0を通して、やっていこうということは?
秋田 当面はリプレイをがんばることになると思います。1stのときのへっぽこ≠ヘ、細かいことをたくさんやって積み重ねていきましたが、今回はひとつの街じゃなくていろんな街を回ってみたいなと。あとはちょっと大きな事件を起こしてみるのもいいかなぁと。
江川 へっぽこ≠熏ナ後は大事件でしたが。
秋田 そうですね。でも、あのときは最後だからいいや、という感じでした(笑)。今回は早いうちから大きめの事件に関わっていこうと思ってます。
江川 ロードムービー風に1巻ごとに地方を移っていく流れですね。
秋田 はい。基本ルーフェリア、2巻はカインガラ。3巻は、さて…という感じです。大き目の事件を起こして、それを追いかけながらいろんな街にいくかたちですね。
江川 リプレイを通して、システムの紹介みたいなものは?
秋田 部位モンスターと戦ったりしてますが、システムについては『たのだん』で触れられていることもありますので、どちらかと言えば、遊んで楽しいよという雰囲気や、世界そのものの面白さを伝えられたらと思ってます。
江川 1stではへっぽこ≠ナ大きな支持を集めましたが、ソード・ワールド2.0でも期待されています。最後に、2.0を通した野望を聞かせてください。
秋田 やっぱり大きなタイトルですし、立ち上げから関わっていますから、リプレイに関わらずいろいろ書いていきたいですね。それに、まだ余白の多い世界ですので、読者さんからいただくものも大きいと思うんですよ。こういう設定はどう?とか、こういう冒険をしたよ、というのを蓄積していく過程に関わっていければと思ってます。
江川 1stのへっぽこ≠ヘ10巻までいきました。
秋田 大変だった部分もありますが、楽しかったほうが大きかったので、2.0でも自分自身楽しんでいければと思います。……でも、やっぱりセッション前には『恐怖の大王、いっちょこい!』って叫んでるかもしれません(笑)。あ、もちろんへっぽこ≠燒Yれてませんので、よろしくお願いします。

 
江川 2.0のメインスタッフとして、藤澤さんがやっていきたいこと、あるいは野望みたいのがあれば聞かせてください。
藤澤 わたし、2.0では自称・営業部長のつもりで活動してるんですよ。ブログを書いたり、あちこちのイベントに参加させてもらったり。これが結果につながってくれると嬉しいですね。
江川 営業部長自認は心強いですね。
藤澤 ブログは頻繁に更新してますので(笑)。最初は1冊目のルールブックが出たら、そこで区切ろうかと思ってたんですが、でも気づいたらそのまま続いてます。
江川 作品でもがんばってもらわないと(笑)。
藤澤 もちろん。小説は是非書きたいですね。いまの『たのだん』以外にもいくつか考えていた企画があって、結構愛着があるんです。リプレイでも小説でもいいので、日の目を見せてあげたいなと思ってます。あとはやっぱり、少しでも多くの人に遊んでいただけるよう、がんばっていきたいですね。
江川 ここを楽しんで欲しいというところは?
藤澤 自分的には、キャラクター作成でのアクセサリーの部分ですかね(笑)。他にも経歴表とか、プレイヤーが自分のキャラクターを可愛がってあげられるような要素がいろいろ入ってますし、楽しんでいただきたいですね。自称・営業部長としては、あちこちのイベントに顔を出すこともありますので、そのときは一緒に遊んでください。『たのだん』1巻ももう発売になります。その後も、連載は続いていきますので、よろしくお願いします。

 そして、トリを勤めるのは北沢慶。

江川 では、まとめに入らせてください。リプレイの展開は秋田みやび、藤澤さなえ、あと諸星崇も『R&R』で書いていまして、充実しています。
北沢 はい。後は小説ですね(笑)。これは僕の担当でして、この冬にお届けできるはずです。
江川 設定に関係するような大きな展開を小説でやっていこう、という目論見ですか?
北沢 もちろん、それなりに大がかりなお話にしていこうと思ってるんですが、実際に遊んでいる方の環境にまで強く影響しないように、とは考えています。ただ、冒険の目標であったり、実際のシナリオであったり、こういうのもありますよという、ルールブック3冊をまとめた巨大キャンペーンの例示みたいな面はかなり意識してますね。目線の近いところでの冒険はリプレイでやってもらってますので、小説はもっと突き抜けたところを書きたいですね。
江川 なるほど。ワールドの展開も気になるところです。最後に、2.0を通してやっていきたいこと、野望みたいなものがありましたら聞かせてください。
北沢 野望? なかなか難しいこと(笑)。
江川 ここは是非、1stを越えるぜ、の一言をみなさん期待していると思います。
北沢 それは、当然大目標ですね。10年、20年と遊んでもらえる、本当に大きなタイトルに育てていきたいです。
江川 1stは20年戦いましたし。
北沢 ええ。それに負けないタイトルとして、ゲームも小説もリプレイも、がんばって盛り上げていこうと思ってます。そのためにも、みなさんの力を貸していただきたいですね。それこそ、いまある地図以外の部分は未知の領域です(笑)。ラクシアには現在展開している地域以外にも大陸はありますから。
江川 実際に遊んでもらいたいしたいし、アイデアがあれば送っていただきたいし。
北沢 そうです。どんどん自由に作っていただいて、みんなで作っていければと思っています。ユーザーさんからいただいたアイデアは、どんどん取り込ませてもらおうと思っていますので、こういうのがやりたいという意見なんかはどしどし送ってもらいたいですね。『ソード・ワールド2.0』、これからもいろいろな企画を準備していますので、どうぞよろしくお願いします。
江川 ありがとうございました。

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