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TOP > ユーザーコンテンツ > 著者インタビュー > 『エンドブレイカー!』インタビュー(2010年8月)
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『エンドブレイカー!』インタビュー

○ はじめに

 グループSNEがお送りする完全新作ファンタジーRPG 『エンドブレイカー!』 。今回はそのメイン制作陣3名を迎え、少しディープな(?)インタビューを行いました。聞き手&書き手は秋口ぎぐる。皆様、しばしお付き合いくださいませ。

2010年8月 発行
執筆:秋口ぎぐる



『エンドブレイカー!』とは?



 『シルバーレイン』 シリーズ に続く 株式会社トミーウォーカー(以下 トミーウォーカー)さん と グループSNE の共同企画。トミーウォーカーさんは プレイ・バイ・ウェブ(以下 PBW。ウェブを使ってキャラクターを作ったりシナリオに応じたキャラクターの行動を考えたりその行動に応じた小説を楽しんだりできる新時代のエンタテインメント) の運営を行い、SNEはそのTRPG版やリプレイ、小説の作成を行う。今回は企画段階から両者が関わり、共にシステムや世界観の構築を行った。
 『エンドブレイカー!』 はいわゆる中世ヨーロッパ風の異世界が舞台。プレイヤーは
「他人の瞳をのぞき込むことでその人に訪れるエンディングを知る」 能力を持った存在―― エンドブレイカー となり、人々を不幸な未来や邪悪な 「マスカレイド」 から救っていく。


○ ターゲット

秋口 本日は 『エンドブレイカー!』 のシステムデザイナー・江川晃さんと、ワールドデザイナー・藤澤さなえさん、そしてリプレイライターの清水一樹さんに来ていただきました。よろしくお願いします。
一同 よろしくお願いしまーす。
秋口 と始めてはみたのですが……実は9月発売の 『Role&Roll』 でなんと100ページの 「『エンドブレイカー!』大特集」 が組まれることになっていまして、そちらにも皆さんのインタビューが掲載されているんですよね。同じ内容を繰りかえしてもおもしろくありませんので、今回はよりディープなお話をうかがっていきたいと思います。
江川 ディープなことって……おっと、やめておこう。書けないことばかり言いそうだ。
秋口 書けることだけ言ってください。
江川 じゃあ、俺、ずっと黙っておく。
一同 (笑)
秋口 ちゃんとまじめな質問をしますので、まじめに返答してください(苦笑)。ではさっそく……今回のTRPG版 『エンドブレイカー!』 ですが、これはどのようなユーザーさんをターゲットに作られたのでしょう?
江川 意識の中に 「PBWユーザー」 というのはもちろんあったんですが、実は既存の(TRPG)ユーザーのことはあまり頭になかったです。
秋口 ほほう。
江川 なぜかと言うと、TRPGってこれまでたくさん作られてきて、どんどんと濃くなっていっているじゃないですか。システム的にもコンセプト的にも。それをさらに濃くしていってどうするんだ、という考えがあって。それよりは もっと既存のTRPGの良いところを立てた作品にしたいかなぁ、というのはありました。
秋口 PBWユーザーだけにアピールするものではなくて、TPRG未経験者全員にアピールするもの、ということですね。ただそういう 「初心者向け」 をうたったものは、これまであまり成功していない気がしますが。どちらかというと、「経験者が思わず初心者に勧めたくなるような、シンプルだけど奥が深い」 ゲームが初心者に広がりやすいような……。
江川 そうですね。ですから、「TRPG経験者がおもしろいと思う要素をいかに抽出するか」 という点に気をつけました。


○ システムのこと

秋口 TRPG経験者がおもしろいと思える要素……たとえば今回のシステムで言うと、「ダイスの出目ごとに異なる技が発動する」 といった部分はおもしろいですよね。
江川 まさにそれです。もともと 「TRPGユーザーは表を振るのが好きだろう」 という考えがあったので。出目ごとに違った驚き、喜びが生まれるシステムにしました。
藤澤 ダイスは6面体を使うんですけど、「出目が6だから良い」 とは決まっていないという。
秋口 ある意味、命中判定の度に 「クリティカル表」 や 「ファンブル表」 を振るようなものですよね。それでいて処理も軽い。TRPG経験者も楽しめて、新鮮味があって、しかも軽いという。すばらしいシステムだと思いました。
清水 「コンビネーション」 のシステムも良いですよね。1人の攻撃が命中すると、仲間のPCも命中判定ができるという。
秋口 ゲヘナ』 で言うところの 「連撃」 をパーティ単位で行えるシステムですよね。たしかにあれも楽しい!
清水 あのシステムはPBW版でも人気がありますよ。2人のキャラクターがコンビネーションを成功させたイラストを、挿絵として発注できるので。
藤澤 需要があるみたいですね(笑)。
江川 PBWは一人でやるゲームと違って、他のキャラクターと絡むのが楽しいというのがありますからね。
秋口 たしか、一般行為判定にもありませんでした? コンビネーションと同じようなシステム……。
江川 ああ、“成功に学べ”かな?
秋口 それそれ!
江川 他のPCが成功しているのを見て「なるほど、ああやるのか」と学べる……つまり、仲間が判定に成功すると自分も成功しやすくなる、というシステムです。
清水 得意な人が 「じゃあ、俺が先にやるよ!」 と率先して動いてくれるので、自然と雰囲気が良くなりますよね。
秋口 そういえば 『エンドブレイカー!』 は、江川さんにとっては初システムデザインになるわけですが。
江川 そうですね、ただ 『ゲヘナ』 を立ち上げるときにけっこう意見は出していましたので、さほど初めて感は強くないですよ。
秋口 そうか、「コンビネーション」 の話が出たときに気づくべきでした。
江川 とにかくサイコロを振るのが好きなんです。
秋口 そう言えば 『ゲヘナ』 や 『シャドウラン』 もサイコロをたくさん振りますね。……ちょっと意外です。江川さんは普段、運要素が少ないゲームのが好きそうなイメージだったので。
江川 ふだんボードゲームをやるときは、たしかに運要素がないほうが好みかもしれない……悪かったね、運なくて(笑)。


○ 世界観のこと

秋口 藤澤さんはどのようなコンセプトで 『エンドブレイカー!』 の世界観を創られたんでしょう?
藤澤 んんー……ライトなファンタジー、ですかね。『エンドブレイカー!』 は 『ソード・ワールド2.0』 みたいな王道ファンタジーではなく、「ジーパン」 が出てくるようなファンタジー世界なので。漫画寄りのファンタジーというか……。
清水 そうですよね。一般的に 「ファンタジー」 と言われて想像する世界ではあるんだけど、随所に今風の雰囲気がある。
藤澤 住人のメンタリティは、すっごい現代人なんですよ。
清水 ただし、冷蔵庫はない。
藤澤 ないね(笑)。
清水 ファンタジー世界って 「ルールに乗っかってないと入りづらい」 という空気がありがちですが、別にお侍さんのような格好をしていても異分子に感じられない、そういう世界なんです。
藤澤 そうそう、「ごった混ぜ」 みたいな!
秋口 いまの若い世代にも入りやすいファンタジー世界、ということでしょうか。ただ……いまの話だと 『ソード・ワールド2.0』 は気軽に入りにくい世界、ということになってしまいますけど。そうではないですよね?(笑)
藤澤 もちろん違います! もちろん 『ソード・ワールド2.0』 も入りやすさは工夫されているんですけど、『エンドブレイカー!』 の場合は、より 「ビジュアル面」 を強く押し出している気がします。たとえば 『ソード・ワールド2.0』 ではルーンフォークがメイド服を着てたりしますけど、あくまで基本は甲冑じゃないですか。でも 『エンドブレイカー!』 にはそもそも甲冑っていうアイテムがないんです。
秋口 ファンタジーなのに、鎧を着ないんですね!
藤澤 着てもいいですけど、PBWの絵を見るとほっとんど着てないです(笑)。ルール上でも、鎧じゃないとダメなんてことは一切ないので。
江川 そもそも 「鎧が堅い」 というシステムがないんです。なので、気に入ったものを着ていい。
秋口 なるほど。ということは、『ソード・ワールド2.0』 はいまのユーザーが入りやすいよう工夫された 「古きよきファンタジー世界」、『エンドブレイカー!』 は完全にいまのユーザーに向けた作られた新しいファンタジー世界、という位置づけでしょうか?
藤澤 わざわざそこを目指したわけではないんですけど、結果的にそうなったと思います!


○ 小説のこと

秋口 『エンドブレイカー!』 は小説版も発売されるんですよね。執筆者は藤澤さん。藤澤さんにとって初の 「完全オリジナル長編」 となりますが、それゆえにこだわった部分などは?
藤澤 んんー……なんて言ったらいいのかな……すごく、欲張りますね。『ソード・ワールド』 小説の場合、その世界の中で自分のキャラクターをいかに活かすか、だけを考えればよかった。でも今回は世界も自分が作ったので、「世界観も活かしたい」 「キャラクターも活かしたい」 となっちゃって、どちらかを生かすとどちらかはポロポロと落ちちゃうんです。舞台となる街のあそこも出したい、ここも出したい、でもキャラも出したい……例えると、スタンプラリーのスタンプの箇所が多くなっちゃった感じ!
秋口 なるほど。まるで旅行のガイドブックのような作りになってしまう、ということですね。
藤澤 これなら紀行文書いたほうが良いんじゃないかな、とか(笑)。
秋口 それだけ欲張った贅沢な小説を鋭意執筆中、ということですね。


○ リプレイのこと

秋口 続いてリプレイについてお聞きしましょう。
清水 ずっと意識していたのは 「世界の雰囲気を伝える」 ことです。もちろんゲームの雰囲気も。「RPGって楽しい!」 という雰囲気を漂わせつつ、ランスブルグという町の特色がストーリーを追っているうちにわかっていくような、そんな話を作りたいと考えていました。
秋口 いまストーリーのお話が出ましたが……リプレイはゲームのシステムを紹介する素材であると同時に、最近は 「純粋な読み物」 として楽しまれることが増えてると思うんですよ。その点、清水くんの 『エンドブレイカー! リプレイ』 は読み物としての重要性が意識されているというか……実は安田社長がストーリーを 「ミステリー仕立てでよく出来ている!」 とほめていらっしゃって、なるほどなぁと思ったのですが。
清水 え、ええと……が、頑張ってひねったつもりです(恐縮)。
秋口 ハンドアウトっぽいものも使った?
清水 いえ、キャラクターは自由に作っていただきました。ただセッション中は重要なNPCと一緒に行動していただき、その中で物語がダイナミックに進んでいくよう工夫しました。どれだけの情報を出すか、完全犯罪にならないかどうか、すごく作り込んで……。
秋口 デビュー作でまた難しいものを(笑)。ただミステリーものって、他のタイプのシナリオに比べてGMの 「こっちへ進んでほしい」 っていう意識がどうしても強くなると思うんですよ。で、無理やりその方向へ進ませるとプレイヤーはおもしろくない。そういった苦労はありませんでしたか?
清水 ありましたね。すごく大量の情報を渡す用意をちゃんとしていたのに、PCたちがそこをすっ飛ばして、いきなり誤解しきった状態で真相へ近づいてしまって。無理に情報を渡すと不自然だし、放っておくと黒幕の陰謀が成立しちゃうし……(笑)。
秋口 どうなったんですか?
清水 次のセッションで、たまたまプレイヤーさんたちが「あれはちょっと違ったんじゃないか?」と考えてくれる機会があって。それで助かりました。
秋口 プレイヤーの方から気づいてくれた、と。
清水 はい。ただ事件の時系列やNPCの関係がややこしくなりがちだったので、安田社長から 「図にしてくれ!」 と要望があり、その図をプレイヤーさんたちに見せたりはしていました。おかげで 「ちょっとおかしい」 と思ってくれたようで。
秋口 話を聞くと、ずいぶんと凝ったミステリーみたいですね。
江川 中身に関しては、最初から(監修者のチェックが入る前から)おもしろかったですよ。
秋口 藤澤さんは、リプレイの執筆者としては大先輩になるわけですが。藤澤さんからの評価は?
藤澤 普通におもしろかったですよ!
秋口 これは僕の独断と偏見ですけど…… 『シャドウラン』 リプレイの江川GMはかっこつけキャラ、『ソード・ワールド』 の藤澤GMはエロどたばた女子大生キャラ、でしたよね?
江川 そう作ってたからね(笑)。
秋口 清水くんの場合、自分で 「GMとしてこういうキャラ立てをしていこう」 みたいな考えはありますか? ちなみに清水くんと同期のベーテ・有理・黒崎くんは 「巨漢アメリカ人キャラ」 として売り出しているわけですが。
清水 難しいなぁ……キャラとして立つかどうかわかりませんけど……表面では 「フフン」 と平気なフリをしてるくせに内面では 「ヒイイ!」 ってなっている「ビビリキャラ」ですかね?
秋口 それはいいかもしれないですね(笑)。世間でGMをやってる人って、大半がそういう感じだと思うんですよ。僕らだってリプレイ録りやイベントでGMをやるときは不安でいっぱいだし。でもそれを表に出すとプレイヤーさんが不安になっちゃうから、表面上は 「フフン」 と振る舞ってる。
清水 うまくやれば皆さんの共感を得られたらいいな、と思ってます。
江川 ……まあ10冊、20冊書いていてそんなキャラのままだと、駄目ですけど。
藤澤 「お前はいつ成長するんだ!」 みたいな(笑)。


○ 最後に

秋口 では皆さん、最後に読者の方へメッセージを。―― 『Role&Roll』 のインタビューでは言ってないことをお願いします。
江川 最後に難しいフリがきたなぁ(苦笑)。
清水 では僕から……そうですね。このリプレイは手練のRPGユーザーだけでなく、ライトノベルの延長線上で手に取ってくださる方も狙っているので、そこからさらにゲームにも興味を持っていただけたらうれしいです。
秋口 清水くんは小説家としてSNEに入ったんですよね。将来的には 『エンドブレイカー!』 の小説も書くんですか?
清水 わわ! ――まだまだそんなこと考えられないので、いまはリプレイに集中して頑張りたいと思います。でも、世界自体はとても好きなので、いろいろと構想していきたいと思います!
藤澤 PBWでは、戦神海峡アクスヘイムや永遠の森エルフヘイム、山斬烈槍ランスブルグが目立ちますが、TRPGではもっといろんな都市を作っていき、その都市ごとに一つテーマを決めて伸ばしていこう、と上村さんとはお話していて。いろんな魔法を取り入れたり、技を取り入れたり……世界観を担当しているものとして、どうしていくかが課題ですが。まだまだ広がるという点で、素晴らしい作品に触れさせてもらえて、本当に恵まれているなあと感じています。
江川 遊んでください、の一言に尽きますね。構えなくてもただキャラクターを作るだけで十分に楽しい、というステップの少ないゲームなので、初めての方もぜひ。
秋口 ――以上でインタビューを終わりたいと思います。今日はありがとうございました!
一同 ありがとうございました!




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