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TOP > ユーザーコンテンツ > 著者インタビュー > 『モンスタニア1』&『ジョウスト! 空をつらぬけ』(2011年05月)
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『モンスタニア1』&『ジョウスト! 空をつらぬけ』
(2011年05月)

■ はじめに
  2011年4月、集英社より小学生・中学生に向けた新レーベル「みらい文庫」が発刊されました。『ワンピース』や『ちびまるこちゃん』のノベライズ作品など人気シリーズが並ぶなか、わがグループSNEから『モンスタニア1』(河端ジュン一/2011年5月2日刊行/好評発売中)、『ジョウスト! 空をつらぬけ』(友野詳/2011年6月刊行予定)の2作が早くもラインナップされています。
 グループSNEではTRPGを元にしたオリジナル作品を多く発表してきましたが、『ウィズ・ドラゴン』シリーズ(ポプラ カラフル文庫)や『妖怪コロキューブ』シリーズ(学研)など、クイズ・パズルブックを含めた児童書の分野にも意欲的に取り組んできました。
 今回はさらなる飛躍の端緒となるであろう上記2作品に焦点を当て、友野詳河端ジュン一の2名にインタビューを行いました。
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2011年5月 発行
記事作成 笠井道子
●『モンスタニア1』
―― まず最初に、2011年5月初旬に発売され、好評発売中の『モンスタニア1』について、河端ジュン一さんから話を聞かせていただきます。
河端 よろしくお願いします。

『モンスタニア1』 集英社みらい文庫
 作:河端ジュン一(グループSNE) 絵:あいやーぼーる
 ある日とつぜん、魔物が住むカードゲームの世界へと召喚された主人公・スグル。もとの世界にもどるため、『禁だんの書』を探しだす旅に出ます。読者は物語に散りばめられたクイズや暗号を解くことで手がかりを得たり秘密の呪文を手に入れたりして、主人公とともに旅をつづけます。読んで遊べる楽しいパズルブックです。

○『モンスタニア1』誕生秘話
―― 河端さんのデビュー作には、今年(2011年)1月、安田社長の元でデザインしたデック構築型/セレクトカードゲーム『エンドブレイカー!SCG BUILD&BREAK』がありますが、小説としてはこの『モンスタニア1』がデビュー作となるんですね。(『エンドブレイカー!SCG BUILD&BREAK』についてはこちらをご覧ください)
河端 ええ、刊行の順番としてはそのとおりです。ただ、グループSNEに入って最初にした仕事は、じつはこの『モンスタニア1』だったんですよ。
―― え、そうだったの? 入社は何年前でしたっけ?
河端 2009年の9月ですから、約1年半前ですね。
―― わたしから見ると、入社時の河端さんは「イラストの上手な人」という印象だったのだけれど、応募の動機はゲームを作りたいから、だったのでしょうか。
河端 イラストも描きたいし、ゲームも作りたいし、小説も書きたい――ともかく、どんなことにも挑戦してみたいと思ってました。で、入社の面接のとき「こういう(パズルブックのような)仕事も考えているから」と言われて、『妖怪コロキューブ』を1冊渡されたんですよ。
―― へええ!(それは初耳だ) 採用も決まってないのに、いきなり……
河端 ええ。でも、ぼく自身、昔からゲームブックとか大好きだったので、お話を伺って、自分が子どものころ好きだったものをぎゅっと詰めこんだ作品が書けたらな、と思ったんです。
―― それまでに小説を書いたことは?
河端 ほとんどなかったんですけれど、入社してすぐ「パズルブックをやりたい者は短編を一本書くように」って言われて、それで提出しました。
―― で、その評価は?
河端 熱意(だけ)は認めてやる」と(笑)。それから本を読んでは自分でも書き、先輩方に教えを乞うて、ひたすら学んで下準備をしていました。
―― 覚えてるかな、この企画が具体的に動きだしたとき、メンバー数人が集まって相談したよね。だれが世界観を作るのか、とか、パズルは手分けして作ろうとか。そのとき、河端さんが「全部一人でやらせてください」って手を挙げて――
河端 覚えてます覚えてます(笑)。
―― で、実際にほんの数日でサンプル原稿を仕上げたのを見て、「この人は天才かもしれん!」って度肝を抜かれたんやけど――
河端 (笑)
―― じつは、企画が動き出す前から着々と構想を練ってたってことか。
河端 じつは、そういうことです(笑)。
○パズルと元気いっぱいのイラスト
―― 『モンスタニア1』が普通の小説と一味ちがうのは、物語の手がかりとなるような楽しいパズルがたくさん入っていることですね。これも河端さんが考えたんですか。
河端 はい、「全部やります」と言ったからには、パズルもすべて自分で考えなきゃって思って。
―― そんなことはないのに(笑)。
河端 本屋さんの児童書コーナーで子どもたちと戯れながら研究したり、迷路集のような本を購入して調べたり、大変は大変でしたけど、楽しかったですね。
―― 読者対象は小学校3年以上を想定してるんですよね。パズルの難易度の設定など難しかったんじゃないですか。
河端 それが、意外と子どもたちのほうが頭が柔らかくて、答えを見つけるのが早かったりするんです。
―― パズル自体、バラエティに富んでるし、難易度もさまざまに設定してありますね。
河端 ええ、なので、きっと気に入るものを見つけてもらえると思います。
―― (本書をぺらり、小声でぼそり)しかし、イラストレーターさん、大変だったろうなあ……
河端 そこなんですよ(笑)! キャラクター紹介や挿絵の他にパズルの絵もあって、普通の本よりイラストが多いですから、(絵を担当してくださった)あいやーぼーるさんは本当に大変だったと思います。
―― 『少年ジャンプ』2011年22号(集英社)にもイラスト入りで大きな広告が掲載されましたが、インパクト抜群。ご苦労かけたかいがありましたね。
河端 ええ、あいやーぼーるさんは「ライブオン」というカードゲームを題材にした『ライブオンCARDLIVER 翔』を描かれた漫画家さんなんですが、男の子が大好きな元気いっぱいのイラストを描いてくださいました。読者のみなさんにも、きっと気に入っていただけると思います。
○お話について
―― 本書では主人公のスグルやエルフの女の子リンなど個性豊かなキャラクターが登場します。こうしたキャラは最初から決まっていたんですか。
河端 いえ、最初に決まってたのは、男の子がカードゲームやってて、カードゲームのモンスターと出会う、最後に最強のボス敵と戦うということだけでした。
―― あら、それだけ(笑)?
河端 そのほかのキャラクターや悪役なんかは、書いていくうちに自然と決まってきた感じですね。
―― 伝説の剣」とか「氷の弓矢」とか小道具の配置が効いてたから、最初から綿密に構成してあったんだな、と思ったんですけど……
河端 ああ! そういう伏線を張るのは好きなので、色々考えました。ストーリーの大筋ができたところで、前にもどって配置していく形で。
―― なるほど。あと、主人公スグルはカードゲームを遊んでいて、「モンスタニア」の世界に召喚されるんですが、カードゲーム「モンスタニア」のモデルはやっぱりグループSNEのデザインした『モンスターコレクションTCG(以下「モンコレ」)』ですよね(きっぱり断定)。
河端 え? いえ、そこは全然意識してなくて、というか、むしろかぶらないようにしたいと思ってて……(汗)
―― え、そうなの? 基本は「モンコレ」なんだけれど、ところどころ差別化の工夫がしてあるんだなって思ってた。たとえばパンダモ(パンダの姿をした怪力戦士)の種族を「ベアフル」という新種族にしたり。
河端 ちがいます、ちがいます(笑)。それはパンダを登場させたいな、と思って、単純に語感から考えた種族名なんですよ。
―― そうだったんだ。では、河端さんとしては、この作品を通じていちばん読者に感じてほしいことはなんでしょうか。
河端 いちばんは、そうですね、キャラクターですね。このキャラクターの考え方が好きとか、そんなふうに感じてもらえたらうれしいです。
―― 人間の登場人物はスグルだけだけど(笑)、モンスターのキャラクターもいっぱい出てくるよね。
河端 モンスターはたくさん出そうと最初から思ってました。

『禁だんの書』を求めて「モンスタニア」の世界を旅するうちに、スグルはたくさんの困難に出会います。人の血を吸う恐ろしい魔物に襲われたり、古代の魔物のいたずらで行く手をふさがれたり。そして、最後には旅で出会った仲間とともに最強モンスターと戦うことになります。迫力満点の決戦はもちろん、生き生きとしたバラエティ豊かなモンスターたちも本書の魅力の一つ。

―― 一応、敵方としてゴブリンやトロールも出てくるんだけれど、悪役というには愛嬌がありすぎて憎めなかったなあ。
河端 ぼく自身、昔から悪役のほうが好きというか、ライダーよりショッカーが好きだったので(笑)、お話も単純な勧善懲悪にはなっていないと思います。
―― それはすごく感じましたね。そうした点も含めて、この作品が「読書の楽しさ」を知ってもらうきっかけの一つになったらいいですね。
河端 はい。イラストがかっこいいでも、パズルをやってみたいでも、入り口はなんでもいいんです。読んでみて「小説って楽しいなあ」と思ってもらえたら、すごくうれしいです。
―― まだ第1巻が出たばかりで、第2巻についての具体的なお話はうかがえないかと思いますが、もしつづきを書くとしたら、どんなお話にしたいですか。
河端 今回、主人公は自分の意思とは関わりなく一方的にモンスタニアの世界に召喚されました。もし続編があるなら、今度は自分の意志で目的意識をもって冒険に旅立つお話にしたいですね。『モンスタニア1』は楽しい作品に仕上がったと思いますので、ぜひお手にとってみてください。そして、感想やご意見をいただければうれしいです。
―― ありがとうございました。
いままさに活躍の場を広げつつある河端さん、これからも楽しい作品を期待していますね。


●『ジョウスト! 空をつらぬけ』
―― つづきまして、2011年6月3日刊行予定の『ジョウスト! 空をつらぬけ』について、著者の友野(詳)さんにお話をうかがいたいと思います。

『ジョウスト! 空をつらぬけ』(以下『ジョウスト!』)
 小学校高学年から中学生を対象にしたスポーツ小説。
 現代テクノロジーによって甦った中世の槍試合(ジョウスト)を題材にしています。
 主人公は天才発明家にして小学生社長の王子宮槍司(おうじのみや・そうじ)。自らジョウスト競技の運営会社を設立し、初代のジュニアチャンピオンとなりました。
 しかし、ある日、まったくの未経験者である一才下の小学生に敗れてしまい……

―― まず最初にお聞きしたいのですが、今回なぜ、あまりメジャーでないジョウスト(槍試合)という競技をテーマに選ばれたのでしょうか。
友野 じつはですね、SNEに入る前、もう20年ほど昔に、現代に槍試合を甦らせたら面白いんじゃないか、と思いついてはいたんです。元々ゲームは好きだし、架空のスポーツを考えたりするのが好きだったので――
―― はいっ、そこでさらに質問が二つ!
友野 なんでしょう(笑)。
―― 架空のスポーツを考えるのが好きということですが、友野さん自身スポーツは……
友野 いや、まったく(笑)。反射神経とか運動神経がなくてね。
―― スキー旅行も毎年参加しておられるし、そんなことはないでしょう。
友野 うん、身体動かすのは好きなんだけどね。ただ、自分ではできないから、せめて小説のなかでは、という思いはあったかな。
―― では、もう一つの質問。槍試合のテーマはずっと以前に思いついたということですが、実際に作品は書きあげていたのですか。
友野 いえ、その直後、グループSNEに入って他の仕事をしていて、ずっと寝かせてあったんですよ。
―― そうだったのですね。ちなみに、現代でも槍試合というのは実際に行われているんですか。
友野 ヨーロッパでは中世の生活を再現して楽しむホビーがあったり、ラスベガスでもショーとして槍試合をやっています。あと、『ゾンビ』の監督ジョージ・A・ロメロの作品に、オートバイを馬に見立てて槍試合をする『ナイトライダーズ』というのがあるんですね。当時、そうした話を聞いたことも発想の源でした。
―― それが今回、どのような経緯で作品として誕生したのでしょうか。
友野 一年ほど前だったかな、集英社みらい文庫さんからのお話があったときに、ふとそれを思いだして、企画書を作成したんですよ。ただ、なんでこんなに長いあいだ寝かせてたかというと、旧来のスポ根ものとはちがう主人公でやりたかった。けれど、なかなか魅力的なキャラクターを思いつかなくて。
―― でも、思いついた?
友野 そうです。ぼくの家は駅から歩いて20分くらいあるんですけれど、ある日SNEからの帰り、最初の二、三歩歩いたところで「これや!」と閃いた(笑)。家に着いたときには、ほぼプロットまで脳内にできあがってました。
―― ほっほう、して、その閃きはどこから?
友野 ふつうのスポ根ものじゃ面白くない。じゃあ、逆にすれば良いだけじゃん、と。
―― ああ! 言われれば、本書ではライバルと主人公の立場が入れかわってますね。
友野 そう、発想の逆転。ちょっとネタばれっぽくなりますが、たとえば『ガラスの仮面』で言えば姫川亜弓が主人公で、北島マヤがライバル役。
―― わかりますわかります! (しかし、このたとえ、何人の読者が理解してくれるんだろう……) では、執筆にあたって、いちばん苦労されたのは?
友野 ともかく書き出しが大変やったですね。主人公槍司のキャラは脳内にはちゃんとできてるんやけど、どう表現したら、その魅力が伝わるのか、と。嫌みにしてみたりツンデレにしてみたり、第一章を何度何度も書きなおしました。
―― その結果、槍司の魅力がいちばん伝わった思うシーンは?
友野 それはね、えーっとね、やっぱり最初の登場シーン。
―― ですよねぇ、わたしも冒頭を読んだとき、「ずるっ!」って思いましたもん。美味しすぎるやんって。
友野 ずるいでしょう(笑)。
○気のきいたギミック
―― お話の内容自体はここでは控えますが、わたし、本書に登場するギミックが大好きなんですよ。槍司の発明したタブレット型端末《Shield》とか、まさにiPadの小型版。
友野 いいでしょ? あれはスマートフォンとはちょっとちがうものを使いたいと思ってるとき、SNEのみんながiPadにはまってるのを見て、思いついたんです。
―― しかし、友野さん自身はまだiPadをお持ちでない……
友野 うん、そろそろ買わなねえ、『ジョウスト!』の印税が入ったら買おうかな(笑)。
―― あと、槍試合に使われる3D立体映像も、すごく面白かった。
友野 あれはね、閃いた瞬間、自分でも「これや」と思いました。

『ジョウスト!』では、現代に甦った槍試合のシーンが見所です。ランサー(槍試合の競技者)は、ランサーポイントなるものを消費することにより、試合中、好みの立体映像を自分にかぶせて、さまざまな外見や視覚効果を活用することができます。

―― ランサーポイントを稼ぐことで、いろんな効果の立体映像を手に入れられるのが、またいい。携帯アプリでアバターとか育てるのと同じ感覚ですね。
友野 そのとおり。ランサーポイントはもちろん試合に勝てばもらえますけど、練習施設を利用するだけでも溜まります。強くなければポイントもらえない、というんじゃ悲しいでしょう。
―― それに、映像にポイントをつぎ込んでも、武器や防具の効果が上がるわけじゃない、ただ「かっこよく」なるだけ。そこがいいんですよ。
友野 ええ、自分の力だけで戦うことに意味がある。でも、それでは華やかさに欠ける。たとえば、TRPGだと実際にはサイコロをふってるだけなんだけれど、魔法や剣技が決まったときには、プレイヤーさんはかっこよく描写するじゃないですか。それと同じで、必殺技が決まったら実際に稲妻を走らせたりしたい。やはり演出は大事だなあ、と。
―― 武器防具や乗り物だけでなく髪をなびかせたり、歯をきらん♪と光らせたり。
友野 あと、編集さんがいろいろ工夫してくださって、本文中に槍試合に関する紹介コラムが入っています。槍(ランス)やプロテクターってこんなのですよ、とかね。で、そこに「髪をたなびかせるには何ポイント必要」なんて紹介もあります(笑)。ほかにも、登場人物のランサー名鑑やそれぞれの必殺技、クライマックスの大会のトーナメント表なんかもありますよ。
―― おお、それは楽しそうだ!
○今後の展開
―― で、軽く触れてあるだけの伏線も本書にはいくつか出ていますよね。主人公槍司のお父さんとか、自称忍者の零斗くんとか。続編の予定はあるのでしょうか。
友野 はい。もうプロットはできてます。年内にお届けできればいいなあ、と。
―― 裏設定とか、きっとたくさんあるのでしょうね。
友野 それはもう(笑)。でも、基本は少年漫画の王道です。テーマは友情、ライバル、成長。ちょっとラブもありーの、つぎつぎと新たなライバルも登場しーの。
―― いいですね。
友野 さらに!
―― さらに!?
友野 最終的には銀河系の覇権をかけて、地球連合軍と宇宙連合軍のあいだで戦闘が起こり。
―― ……は?
友野 というような、外伝を百枚くらいで書きたいなあ、と。
―― ……ええと?
友野 いやいや、冗談ですって(笑)
―― (友野さんが言うと冗談に聞こえないんだ)
友野 ともかく、いままでぼくの小説を読んでくださった方なら、絶対に楽しんでもらえると思いますので、子ども向けと思わず、ぜひ読んでいただきたいと思います。


 若々しい感性あふれる河端ジュン一の『モンスタニア1』、熟練者ならではの冴えを見せる友野詳の『ジョウスト! 空をつらぬけ』。
 それぞれに味わいの異なる2冊、ぜひお手にとっておたしかめください。


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