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クレイとフィンと夢見た手紙

 児童向けからライトノベル、大人向け作品まで精力的に作品を発表し続ける友野詳
 今回は、
9月30日に発売された『クレイとフィンと夢見た手紙』のインタビューをお届けします!

  【作品紹介】

<永遠の昼下がりの森>に住むクレイとフィン。
<郵便屋>のふたりが回収/配達するのは

『出されなかった手紙』
『書かれなかった手紙』
『本当に欲しかった手紙』
『普通じゃない手紙』

世界の外にある<永遠の昼下がりの森>と、世界の内にある<どこか>を白い霧がつなげる時。
優しくてあたたかい、五つの物語がはじまります。
2013年10月 発行
記事作成 こあらだまり


―― では、『クレイとフィンと夢見た手紙』のインタビュー。友野詳先生にお話をうかがっていきたいと思います!
友野 はい。インタビューされます。インタビュアーは新人のこあらだ
―― あ、そうですそうです。(私が紹介されてどうするッ)よろしくお願いします!
友野 はい。よろしくお願いします。


◆企画の始まりのことなど
―― 『クレイとフィンと夢見た手紙』はMF文庫さんからですが、こちらのレーベルは友野さんにとっては、初めてですよね。どういった経緯で書くことになったのですか?
友野 そうですね。レーベルさん的には初めてのお付き合いなんですが……。以前、別の作品でお世話になった編集さんがMF文庫編集部に異動になりまして。その時に声をかけて頂いた、と。業界的にはよくある話ですね。
―― なるほど。ちょっとMF文庫さんの中でも毛色が変わった作品、という印象を受けましたが?
友野 そうですね。よく言われます。――狙ってますね(笑)。
―― 狙ってますか(笑)。
友野 新しい企画を、ということでいくつか案を出したわけですよ。まあ、僕もMF文庫さんのイメージだと、学園異能バトルで女の子がたくさん出てくる話かなって、そういったものも考えていました。
―― ほうほう。
友野 そしたら、担当の編集さんから、「学園異能バトルはいっぱいあるし、せっかく新しく友野さんと本を出すのだから、新しい読者さんにアピールするものが欲しい」と。それで、出した中から「一番MF文庫らしくないよねー」と思っていた企画が通ったわけです。それが『クレイとフィンと夢見る手紙』でした。


◆スタイリッシュなイラストのことなど
―― あとがきで、この小説はイラストのイメージに合わせて書いたとお話されていますが。
友野 はい。最初に企画の話があったとき編集さんに、「この人と友野さんの組み合わせが面白いと思うんで」スオウさんのイラストを見せて頂いたんですね。だから、企画を考える時にスオウさんの画風が念頭にあって、お互いの持ち味を生かしあえるものをと考えました。
―― なるほど。
友野 クレイとフィンに関しては、最初に見せて頂いた中に男の子ふたり組のイラストがあったので、男ふたりのバディもの、という感じで。
―― スオウさんのイラスト、すごくかっこいいですよね。……こう、スタイリッシュ! な感じで。
友野 イラストは僕も最初見た時に惹かれました。「これはすごい!」と。非常に気に入っております。
―― 表紙もいろんなところで話題になってますよね。
友野 まず表紙で手に取って頂けてるんで、あと中身を最後まで読んでもらえるかは僕のお仕事ですね。絵で買ったけど、絵だけだったと言われないためにも頑張らねばと思いました。あんまりスタイリッシュって僕の作風には似合ってないんで。
―― え、でも、読んでると絵も話もすごく合ってるって思いましたよ。
友野 そう思っていただけたなら良かったです。「友野さんで」って言ってくださった編集さんの目が正しかったっていうことでしょうね。


◆世界観についてのことなど
―― ではでは、お次は舞台となる世界についてお願いします。つぎはぎされた地球。その外にある<永遠の昼下がりの森>。そこに住む、<郵便屋><騎士><教師>といった人々……。世界設定からしてすごく面白そうなのですが。
友野 もともと、『霧に包まれた森にいろんな旅人たちがいる』っていう設定を考えたことがあったんですよ。森の霧から出ると、毎回違う時代、違う国にたどりつく。それで、安息の地を探して旅をしている。今回の企画を考える時にそれをふと思い出して、森の中の一軒家で、こう……。
―― こう?
友野 男ふたりがだらだらしてるのを。
―― だらだらですかい(笑)。
友野 で、霧の中に出て行って、そこを抜けてどっか行く。だけど、どこに行くんや? 何しに行くんや? なんか男ふたりで安息の地を探すっていうのも目的としてどうやろう? と思いまして。
―― たしかに。
友野 それで旅をする理由を考えて、お届け物をする人にしようと。テガミバチとかポストマン(友野注:原作のほう。映画のことは忘れるように)とか。ジャンルとしては、お手紙モノっていうのか。
―― あー。ありますね。
友野 企画段階では『郵便屋奇譚』という仮タイトルで進めていました。最初はパラレルワールドのあっちこっちに行こうと思ってたんですけど、それだと今ひとつ話の求心力がないなと。
―― 確かに、行った先がバラバラだと、その世界のことをじっくり描けませんからね。
友野 それに、『何のために届けるのか?』という理屈づけですね。それを考えていった時に、パラレルワールドがひとつの地球としてつぎはぎになっていて、パッチワークだから糸が弱いとほつれてしまう。それで、それをつなぎとめようとしている<縫い合わせ屋(ソウヤーズ)>っていう人たちがいる。というのはどうかなと。
―― クレイとフィンは、<縫い合わせ屋>の中でも<郵便屋>ですよね。手紙を届けることが世界をつなぎとめることになるということですか?
友野 手紙を通して、言葉の力で人と人との絆をつなげていく
―― ふむふむ。
友野 言葉の持つ力言葉の無力さっていうのを、ずっと考えているところがありましてね。僕が前に作ったルナルっていう世界でも、たくさんの神様がいる中で、一番重要なのは、法の神ガヤンと物語の神シャストアという言葉の神々ですし。
―― 言葉の力が大きな役割を持つと。
友野 言葉の力コミュニケーションの難しさを手紙モノというジャンルで書いていったら色々面白いかなと。そうして「クレイとフィン」ができてきました。
―― なるほど。
友野 ただ、パッチワーク的なごった煮の世界といっても、あんまり広すぎても良くないんですよ。だから、この作品については、ある程度年代を限定しました。
―― 年代的なイメージは1880年代ぐらいですか?
友野 19世紀末から20世紀初頭ですね。第一次世界大戦まで。ちょっと第二次世界大戦ごろも入ってますが。第3話なんかは完全に二次大戦ごろのイメージで書いています。テクノロジー的には第一次大戦期の技術に超技術が入っている感じだけど。
―― スチームパンク的な蒸気で動くギミックってロマンですなぁ。
友野 あとは、人間以外の種族が好きなんで。
―― あ! 作中でも異貌種(ワイルドレイス)の人たちがいますね。
友野 はい。ワーウルフ吸血鬼鳥人間の女の子が出てきます。
―― 異種族好きの方にもオススメ!
友野 まだ、パッチワークアースのすべての部分を細かく決めているわけではないので、皆さまの支持を得て続けられたらこの先いろんな場所を埋めて行きたいと思います。
―― おお。それは楽しみですね。


◆<郵便屋>コンビのことなど
―― 次は、キャラクターについて。まずは主人公のフィンさんとクレイさんのことからお願いします。

フィン・クラウソラス
 <郵便屋>コンビの自称頭脳労働担当。いつもにこやかな美少年で、どこか掴みどころがない雰囲気を漂わせている。交渉や料理、手品に薬草茶づくりまでこなす多芸多才な人物だが、隙あらばサボろうとする。主に手紙の回収を行う。

クレイヴ・ソリッシュ(クレイ)
 いつもフィンに肉体労働を押し付けられている青年。フィンの半年ほど後に<郵便屋>になった。目つきが悪く不機嫌そうな顔をしていることが多いが、真面目で実直な性格。手紙の届け先が大雑把にわかる特殊能力を持ち、配送を担当する。

―― 今回はバディものですが、やっぱりその辺りは意識しました?
友野 そうですね。組み合わせになるように考えていきました。だから、僕としてはめずらしいんですけど、二人のかけ合いのシーンを書くところから始めました。
―― いつもと違ったやり方だったんです?
友野 ええ。脳内で作者とキャラクターが会話して「お前は何をやりたいんや?」って聞くことはたまにやるんですが、今回はバディとして存在してもらわないといけないので、作者自身との会話ではなく、クレイとフィンに話してもらいました。
―― なるほど。
友野 まあ、それは脳内では難しかったんで、実際に手を動かして書きました。その一部は作品の中にも生きてますね。プロローグのところとか。最初っから、クレイは乱暴にフィンを蹴ろうとしたりしてました。
―― クレイさんが肉体労働担当でフィンさんが頭脳労働担当ってことになってるじゃないですか。だから、私も読みながら、あんなツッコミ受けてフィンさん大丈夫かなぁってハラハラしてたんですが。……負けてないですね。
友野 負けてないですよ。フィンがサボりたいから頭脳労働担当って言ってるだけで、スペック的にはクレイとフィンは対等です。どっちかというと、この二人は能力値より技能で差をつけてるタイプですから。
―― 技能か。そういえば、フィンさん多芸ですよねぇ。お茶入れたり、料理したり、手品したり。……いつも思うんですけど手品のアレってどうなってるんですか? お茶とか水筒とか、どこからともなく出てきてますよね。もしや<郵便屋>としての特殊能力!?
友野 それは秘密です(笑)。そこは、きちんと考えてるかもしれないし、考えてないかもしれない。まあ、いずれ出るかもしれない設定を先に語るのも野暮ってもんです。
―― はっ。たしかに。でも、他にも謎は多そうです。クレイさんの過去とかもめっちゃ気になりますし。
友野 謎の銀の腕とかね。その辺りはちゃんと考えてあるんで、シリーズとして続けばいずれ語りますよ。今回はクレイにいろいろ過去があるぞとにおわせているけど、フィンにももちろんあります。
―― フィンさんの方が先輩なんですよね。郵便屋として。
友野 フィンはクレイの過去やパッチワークになる前の世界を知っているので、いろいろ意味ありげな事も言ってるけど、クレイはフィンの過去を何も知らないので突っ込めないでいるという。
―― なるほど。そういう力関係なんですね。


◆ヒロインたちのことなど
―― では、次はそれぞれの話のヒロインについてお聞きしましょうか。
友野 はっはっは。趣味です!!
―― 趣味かいッ!(思わずツッコミ)
友野 全部趣味です!!!
―― 全部なんかーい!!(二度目のツッコミ)
友野 ストライクゾーン広いんで。僕。

と、いうわけで友野さんの広いストライクゾーンを確認するためにも、各話のヒロインをおさらいです!

第1話:魔女の館の使用人
 魔女の館に住んでいる娘。魔女が亡くなった後もそこをひとりで守っていた。孤独で孤高でどことなく野生を感じさせる。

第2話:ジュヌビエーヴ
 吸血鬼の長ヴラド大公に庇護されている少女。大公の代弁者であり、一族の行く末を案じている。ガラス細工のような儚げで華奢な少女だが実は……。

第3話:ヴィクトリア
 煤煙と霧の都ロンデニアでクレイが出会った少女。上品な物腰や言動からは育ちの良さがうかがえる。正義感や責任感の強さから思い切った行動をすることも。

第4話:アリス
 地下迷宮のカジノを仕切っているリーダー。ギャングを前にしても一歩も引かないほど肝の座っている娘さん。『指落としのアリス』という物騒な異名をつけられている。

第5話:チカチ
 鳥人間(フェザーフォルク)の女の子。まだ10歳だが、部族内で巫女という重要な立場にある。怒らせると容赦ない蹴りが飛んでくるが、好意を抱いた相手には素直に甘えてくる。

―― 色々な子がいますね。別に誰に順位つけるとかじゃなく、もう趣味なんですね。
友野 そら、まあ「嫁にするなら〜」とか「付き合うなら〜」とかならいろいろあるかも知れませんが。
―― おお。じゃあ、にするなら?
友野 嫁にするなら……全員嫌やッ! めんどくさいわ、こいつら(笑)。
―― なるほど。えーっと。じゃあ、いっしょにボードゲーム遊ぶなら?
友野 ボードゲームはねえ。――ヴィクトリアさんかな。一番強いと思います。マナーも守ってくれるだろうしな。
―― アリスさんじゃないんですね。
友野 アリスはねえ。あれはただの博打うち。あいつはボードゲーマーじゃない(笑)。
―― 第四話はボードゲームの話なのに?
友野 この話の中でゲーマーはフィンだけなので。
―― ああ。確かに第4話読むとフィンさんのゲーマーっぷりが明らかになりますね。しかも、かなりコアなゲーマーとみた!
友野 あいつの世界はボードゲームやカードゲームが流行ってた。たぶん、TCGが史実より一世紀ぐらい早く発明されていた。
―― 俺のターン、ドロー!! とかやってたんですかね(笑)。
友野 やってたと思います。
―― ゲームだとジュヌビエーヴさんは? 彼女も頭良さそうだから向いてそうですが。
友野 ジュヌビエーヴは勝ち汚い。盤外で勝負決めてくる
―― ディプロマシーとか強そうですね。
友野 絶対やりたくねぇ(笑)。ディプロマシーやると、ジュヌビエーヴとヴィクトリアが噛み合ってるうちに、するっとマリアーヌが勝ちます。
―― マリアーヌさんって第2話に登場する人ですね。口絵に出てきてない6人目のヒロインか。
友野 読んで頂いていない方には意味不明の会話になっていますね。まあ、読んでください。意味が分かるために(笑)。
―― じゃあ、読んでない人にもわかる話に戻しましょうか。
友野 5人のヒロインはお話優先で考えたキャラクターもいるし、まずキャラクターが出てきて「私の話を書け」って主張してきたのもいる。手紙の中身のアイディアから、この手紙を届けるにふさわしいのは? と考えてできたキャラクターもいる。そこらへんはいろいろな形で造形しました。
―― ふむふむ。
友野 基本的には自分の好きなタイプの“見てて楽しい”女の子を書いた。付き合って楽しいかはどうかな? ヴィクトリアとか嫁にしたらえらいことになりますからね。ネタバレなので詳細は伏せますが。なんだかんだでキャラクターの中で一番嫁に向いてるのって、クレイ君だと思います。
―― まさかの!?
友野 あいつ、基本が『おかん』なんで。
―― かいがいしく世話してくれそうですね。フィンさんは幸せだなぁ(しみじみ)。
友野 幸せかはさておき、楽はしてますね。
―― えーと。まあ、脱線しましたが。ヒロインの話でしたね(笑)。
友野 ええ。楽しんで書きました。それぞれが一冊分のお話のヒロインになれるぐらいキャラクター造形してあります。色々タイプも属性も違う子を取り揃えております。ロリから姉御まで。
―― 私はチカチさんがツボでした! すごくカワイイ!!
友野 チカチがかわいくないとあの話は成立しないんで、がんばりました。さっき秋口ぎぐるには1話が一番良かったって言われました。まあ、いろんな方にそれぞれ、この話が良かったとか、このキャラが良かったとか言っていただけるのは、こうしたバラエティに富んだ作品の強みです。


◆今後のことなど
―― では、最後に今後のことなどをお願いします。
友野 続きを書かせて頂けるなら、次は完全などたばたとか書いてみたいかなぁと思っています。今回も、もっとシリアスとコメディの落差があってもよかったかなと思ってますので。
―― どたばたというと、2話目みたいなノリの話ですね。あれは、爆笑しました。1話目がシリアスだから、次もそうなのかなと思ってたらコメディですもの。
友野 舞台は思いっきり耽美風なんですけど。イギリスのクラシックファンタジーの大作に『ゴーメンガースト』ってあるんですが、そのイメージです。そこに吸血鬼を趣味で。そんなノリでこの作品には好きなものを次々にブチ込んであります。
―― 楽しんで書かれているのがよくわかります。
友野 敵サイドもまだまだ謎に包まれています。<引き裂き屋(リッパーズ)>でございますから、当然、そのうちジャックも――。
―― お。なるほど(ニヤリ)。1888年。ジャック・ザ・リッパーですね。
友野 はい。その辺りも含めて、いずれ語っていけたらなと思っています。そのためにも、読者の皆様の応援をお願いします。
―― よろしくお願いします!


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