※地の文はミケ役のプレイヤーが、それぞれのセリフは各自が担当してください。ヤナギのセリフは、クロかブチ役のプレイヤーが担当するといいでしょう。
悪魔(ミケ)「くそう。あと少しだったのに」
ミケはその姿をおどろおどろしい影に変えた。だが、その力ははかなく、水に溶けるように薄くなっていく。
シロ「さっさと消えなさい!」
シロは牙をむき出しにして威嚇する。
トラ「そうだそうだ!」
トラも毛を逆立てる。
ブチ「ねえ、なかよくできないの?」
クロ「無理じゃよ。ヤナギを助けるためじゃ」
ブチ「そっか」
悲しそうなブチ。クロはブチが悲しい理由もわかっている。
ブチ「ぼくたちもいかないといけないよね?」
クロ「そうじゃ、わしらもここにいてはならん」
ブチ「うん……」
クロ「わしも長い使命から解放されるようじゃ」
悪魔(ミケ)「そうだぞ。俺が消えればおまえたちも……」
トラ「うるさーい。ねこプッシュ~」
悪魔(ミケ)「むぎゅ」
ブチ「はははは」
消えかけたブチが笑う。
シロ「ブチは、このままでいいの?」
ブチ「やなぎにきいたことあるんだ。ねこのたましいはきゅうこあるんだって。だからぼくもまたねこになってもどってくるよ、おかあさんもさがしてさ」
ヤナギ「うっ、み、みんな。無事か?」
ヤナギが起き上がる。
ヤナギ「クロ、ブチ……」
ブチ「せっかくはなせてたのしかったんだけど」
クロ「儂は見えなくてもずっと一緒におるんじゃよ。悲しい顔をするでない」
ブチ「ねこってなんどもよみがえるんだよね」
ヤナギ「……そうだね。はやく新しい毛皮に着替えて戻っておいで」
クロとブチはヤナギの鼻にこつんと鼻をぶつける。
クロ「じゃあ、シロ。あとは頼むぞ」
シロ「うん……」
ブチ「じゃあね」
悪魔(ミケ)「やれやれ。とんだくたびれもうけだったぜ。俺が消えれば、願いの主の記憶も消えてなくなるぞ……」
悪魔の影が完全に消えるとともに、クロとブチの影も消えていく。
ヤナギとシロとトラは完全に二匹が消えるのをただ見つめていた。
そして、すべてが終わると、ヤナギが急に頭をかかえた。
ヤナギ「っ、うう」
シロ「にゃっ、にゃにゃにゃ!」
トラ「にゃーーー」
ヤナギ「あー、どうしたんだ。お前ら。なんでだろうな。なんかお前たちとおしゃべりしていた夢を見たんだ」
ヤナギは背伸びをしながら歩く。カリカリを所望するトラに『ちょっと待って』と言って、趣味の部屋へと向かう。
ヤナギ「おまえらが来る前にいた子たちだよ」
三毛猫と、ブチの子猫と、黒い猫の写真を見せる。
ヤナギ「黒い猫は長生きでさ、死んだあともずっと一緒にいてくれる気がしてさ。三毛猫はお母さんで、ブチの子猫はその子どもだったんだ。子猫はすぐ死んじゃって、三毛猫は子猫を探しに何度も脱走を企てて大変だったよ……ああ、また会いたいなあ」
シロ「にゃあにゃあ」
ヤナギ「はは、私がいるでしょって?」
トラ「にゃーーー」
ヤナギ「はいはい、わかってるって。なんだかな、言いたいことがわかる気がする」
ヤナギとシロとトラはそっと部屋のドアを閉めた。
そして、数年後――。
ヤナギ「ん、どうした? シロにトラ?」
窓の外をじっと見ている二匹の視線をヤナギは追いかける。弱った三毛猫がいるのに気がつき、慌てて外に出て、家に運び込んだ。
ヤナギ「大きなおなかだ。子猫がいるのかな? 今度こそちゃんと、助けてやるからな」
シロ「なー」
トラ「なー」
クロ『みゃー』
ヤナギ「ん?」
ヤナギは聞こえないはずの違う猫の声が聞こえた気がして、周りを見る。
その声は『今度は大丈夫』と言っているように聞こえた。
ヤナギ「まず温めようか」
ヤナギは柔らかいクッションの上に三毛猫をのせると、ゆたんぽの準備を始めた。