※地の文とヤナギ、新たに登場するNPCのセリフは、相談して適切なプレイヤーが、それぞれのセリフは各自が担当してください。トラ以外(特にシロ)は、あまりセリフがありません。
トラ「おなかいっぱい、ごはん食べたい!」
大きく前足を上げるトラ。
呆然とするミケ。
どこからともなく、合成音声風の声がする。
悪魔の契約書「契約が、完了しました」
ミケ「ちょ、ちょっと待って! 今の、今の無し!」
シロ「信じられないけど」
クロ「ある意味、グッジョブなのかの?」
クロは『よくやった』と、きりっとした顔を見せる。
トラ「うわーい、ヤナギー、たくさんごはん食べさせてー」
トラは横たわっているヤナギを起こす。
ヤナギ「うっ、うう」
トラ「ごっはっん! ごっはっん!」
ヤナギ「うう、さからえないー」
ヤナギは、トラにねだられるまま、カリカリを与えてしまう。
ブチ「ねえねえ。このばあい、けいやくはどうなるの?」
全員がミケを見る。
ミケ「どうなるっていうか、ワリカンになるっていうか。あー、猫の願いだと価格下がるんだよな」
悪魔の契約書「再計算します……再計算終了しました。一人と一匹、種族に呼応した寿命をいただきます」
ミケ「それって?」
クロ「ヤナギは死なないということでよいのかな?」
ミケ「いや、嘘だろ、嘘? 人間と猫とじゃ、魂のレート、だいぶ違うんだぞ!!」
トラ「でもごはんたべられるんだよね!」
ブチ「よかったね」
シロ「信じられない……、あんたの寿命が縮むのよ?」
クロ「そして、ヤナギも」
ヤナギはクロをそっと撫でる。
ヤナギ「転職するよ。社畜辞めたら、きっと寿命くらい延びる。おまえたちがいる生活を一分でも増やすよ」
ミケが、けっと唾を吐く。
ミケ「俺帰るわ」
ブチ「帰っちゃうの?」
ヤナギ「まってくれ。まだこのままだと契約不履行だろ」
ミケ「覚えてやがったか」
ミケの影が二つに分かれる。一つは悪魔の姿、もう一つはミケの姿。
悪魔「さあ。こっちが本物のミケだよ。じゃあな」
悪魔は魔法陣の上に立つと、煙のように消えていった。
一年後――。 カリカリにつっぷして息絶えていたトラの姿。
ヤナギ「ははは、最後までお前らしいな。好きなだけ食べて満足したか?」
ヤナギはずっしりと、しかしだらんと力がないトラの身体を抱き上げる。ゆっくり撫でて、柔らかい毛並みを堪能する。
ヤナギ「トラは一年か」
ヤナギは自分の手のひらを見た。手相はわからないが生命線とやらはやたら短くなった気がする。
ヤナギ「俺も、終活しないとな……」
クロにシロにミケにブチ。
他の猫たちはまだまだ生きるだろう。クロに至っては尻尾が二つに割れかけている。
自分がいなくなっても彼らには何不自由ない生活をさせたい。
ヤナギは柔らかいブランケットを敷いた段ボールにそっとトラを置いた。