最多票を入れられたアイマダは、すぐに「俺じゃない!」と否定した。
弁明はどんどん語気が荒くなり、みんなは、その態度に疑惑をさらにつのらせていった。
険悪なムードが限界に達した時、アイマダのマイクから、インターホンのチャイムが聞こえた。
時刻はすでに朝になっている。警察が来たのだ。
他の3人の自宅にも、間を置かず警察がやって来た。
アイマダは任意同行に応じようとしない。このようすでは自白することはないだろう。
3人は目の前の警察官に、アイマダが犯人だと証言し始めた。
つけたままのイヤホンから、その言葉を聞いたアイマダは、目の前の警察官を見た。左胸には無線機がついている。今にでもこの警察官に情報が行くだろう。
アイマダは身をひるがえした。警察官をふりきって、窓から逃亡したのだ。もちろん逃げ切れるわけがなかった。外に待ち構えていた別の警察官によって、あっという間に拘束された。
捕まえられてなお罪を認めないアイマダの声は、つけっぱなしのマイクから送られていたが、もう誰もそれを聞いていなかった。みな、Vコミュからログアウトしていたのだ。ワールドもネコスキが消してしまい、ただひとり残ったアイマダのアバターは、何もない無のワールドへ送られた。やがていつかアイマダのPCの電源が落とされるまで、3人のフレンドリストにはログインしているアイマダが映り続けた。
3人が縁を切ったわけではない。また集まって、今回の事件とは関係のないことを話し合うこともあるだろう。その流れで、ふとこの日のことを話し合いたくなる瞬間もあるはずだ。しかしきっと、「思い返すのはよそう」と止められる。
その話を止めるのは、この中にいる本当の犯人だろう。