最多票を入れられたNさんは、罪を認めなかった。恋人を殺すわけがないと、かたくなに否定した。
だが、ペインと恋人関係だったという事実が、さまざまな憶測を広げて、3人の疑いは深まるばかりだった。
気づけば、すでに時刻は朝だ。Nさんがみんなの気持ちを変えるような説得を思いつけないまま、インターホンのチャイムが鳴った。他の3人の家にも続けて警察がやって来た。
Nさんは任意同行に応じる前に、にこやかなままのアバターで3人を見た。現実のNさんが、いったいどんな表情をしているのか想像する暇もなく、Nさんはログアウトした。
あなたたち3人も、何も言わずにVコミュからログアウトした。誰もいなくなったワールドはすぐにネコスキが消した。
3人の仲が消えたわけではない。また集まって、今回の事件とは関係のないことを話し合うこともあるだろう。その流れで、ふとこの日のことを話し合いたくなる瞬間もあるはずだ。しかしきっと、「思い返すのはよそう」と止められる。
その話を止めるのは、この中にいる本当の犯人だろう。