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『シルク・ドゥ・モンスター』先行発売直前インタビュー
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『シルク・ドゥ・モンスター』先行発売直前インタビュー

  グループSNEの完全オリジナルゲーム『
シルク・ドゥ・モンスター』(発売:富士見書房、販売:ブシロード)がいよいよ、JGC2012にて先行発売されます。
『ドミニオン』や『サンダーストーン』『エンドブレイカー!SCG Build&Break』といったデック構築型カードゲームに新たな要素「オークション(競り)」を加えたことで、あっと驚く斬新な一作になりました。
 プレイ人数3人から5人、プレイ時間は30分〜45分と遊びやすい仕様に加え、ルールもじつにシンプル
 それでいて、遊ぶたびに赴きが異なる深い味わいを備えています。

 今回は総監修の安田均、デザイナーの秋口ぎぐる、ディベロッパーの河端ジュン一、そして『モンスターサーカスへようこそ!〜
シルク・ドゥ・モンスター リプレイ』を執筆した藤澤さなえに、今後の予定も含めてたっぷり話を聞かせてもらいました。

商品名 シルク・ドゥ・モンスター 
プレイ人数 3〜5人
プレイ時間 30〜45分
内容 カード236枚(全46種)
発売日 2012年10月6日
価格 ¥3,360(税込)〈JGC2012先行発売)
発売元 富士見書房
販売元 ブシロード
   
商品名 モンスターサーカスへようこそ!
〜シルク・ドゥ・モンスター リプレイ〜
藤澤さなえ/グループSNE
発行 ネオゲーム文庫(新紀元社)
予価 893円(税込み)
発売日 2012年10月6日〈JGC2012先行発売)
2012年8月 発行
執筆:笠井道子

  目 次

                                

■『シルク・ドゥ・モンスター』


●『シルク・ドゥ・モンスター』とは?
―― 正式発売の10月6日に先駆け、JGC2012(8月31日(金)〜9月2日(日))で先行発売と体験会が行われると聞いています。まず最初に、『シルク・ドゥ・モンスター』とは、どういうゲームでしょうか。
安田 簡単です。モンスターのスポンサーを連れてくるゲーム。
―― ……えっと?(苦笑)
安田 世界はファンタジーで、プレイヤーはうらぶれたモンスターサーカス団の団長なんですよ。
―― なるほど、それで良いスポンサーを物色中なのですか。
安田 ゴブリンとかサテュロスといった団員に芸をさせて、有力なスポンサーを後ろ盾にし、サーカスの人気(勝利点)を競いあうというゲームです
―― 良いスポンサーがいればどんどん客も入り、サーカスの「人気」はうなぎ登り、となるわけですね。
秋口 (笠井にこっそり) まずシステムの説明、しとかなくていいですかね(笑)。
―― おっと、そうでした。大きく分けると「カードゲーム」ということでよろしいですか。
安田 はい、基本は『ドミニオン』や『サンダーストーン』と同じデック構築型です。デックはサーカス団の団員を表しているんですが、最初は《ゴブリンの玉乗り》と《サテュロスの一輪車》の2種類、あわせて8枚しか入っていません。でも、さっき言ったように、有力なスポンサーを連れてくれば良い団員が雇えて、どんどん自分だけのサーカス団(デック)が作れますよ、と。
―― そこにさらに新しく「競り(オークション)」の要素が加わったと聞いています。
安田 そうです、サーカス団ごとに、スポンサーの前で団員にサーカスをさせて演技を競いあうんですが、その部分が「競り」になっています。
―― 遊んでみて思ったんですが、ある種「入れ子構造」になってるんですね、有力なスポンサーを獲得して、いい団員を雇う。いい団員がいれば、さらにいいスポンサーを獲得できる――
安田 そうすれば、さらにいい団員を雇えるというように、ぐるぐる回転していくんです。


●システム完成まで
―― 競りという新しい要素の加わった『シルク・ドゥ・モンスター』ですが、このゲームを作るきっかけになったのは……
安田 はい!(すちゃっと秋口ぎぐるを指さす)
―― お(笑)?
安田 デック構築型ゲームは多々あれど、そこに新しさを加えるにはどうしたらいいかと、秋口くんとわたしで話してて、競りを入れたら面白いんじゃないか、と提案したんです。
秋口 ぼくはぼくで新しい形を模索していたところに、安田社長から「競り要素どうや?」というオーダーがあって(笑)、まさに合致するな、と。
―― それはいつ頃のことでしょうか。
安田 キャット&チョコレート』が完成して「じゃあ、つぎ何しようか」となったんだよね。2010年の初夏、「グループSNEコンベンション2010」(2010年4月開催)のあとだった。
秋口 そうです、JGC2010ではもう富士見書房さんにプレゼンしてましたから。二年以上前になりますね。
―― それ以降、ゲームとして大きく変わったのでしょうか。
安田 基本は変わってません。ただ、テーマがね、元のもユーモアがあって、非常に面白かったんだけれども、そのままでは出せなかった。
秋口 だからって発禁とかじゃないですよ、ぜんぜん下品じゃなかったですから!
安田 だれもそんなん言うてへんて(爆笑)。
具体的には、実在する俳優の賞取りゲームというテーマで、肖像権などの問題がありました。
―― この2年間、事務所でも本当に何度もテストプレイをくり返されてましたね。
秋口 ここで一言、言わせてください。ぼくね、みなさんがテストプレイする段階に至るまでに、何千回も遊んでるんですよ。毎晩毎晩、一人とか二人で。
―― 競りゲームを一人二人で? どうやって?
秋口 一人で二役三役やるんですよ、もう大変でした。
安田 それは知らんかった……。
―― 読者のみなさん、『シルク・ドゥ・モンスター』は3人から5人で遊ぶゲームです。
安田 ぜひお友だちと一緒に遊んでください、一人はさすがに寂しいから(笑)。


●『シルク・ドゥ・モンスター』へ
―― そんな苦労の甲斐あって、ゲームの基本が完成したわけですが、世界観のほうは――
安田 さっき言ったようにそのままでは使えない。で、いろいろ考えたんやけれど、ぎぐるくんが悩みだしてね。
秋口 ええ、別の世界観をあてはめようとなったとき、最初のテーマ(俳優と映画賞)とはまったく別物にしないといけない、という意識が強すぎて。
安田 ああ、なるほど、そうか。
秋口 いまのサーカス団員とスポンサーは、最初のテーマとそれほどかけ離れてはいないんですが、ぼくは固定観念に縛られて、そこに移れなかった。だから、河端くんに入ってもらってよかったと思ってます。
河端 ありがとうございます(笑)。
安田 そうして、ぎぐるくんの作ったシステムと河端の作った世界観を融合させたのがわたし。接着剤の役割やね。
―― そこにはまた、別のご苦労があったと思いますが、いかがですか。
安田 現実世界の俳優と、ファンタジー世界のモンスターではやっぱり特殊能力ニュアンスが違ってくる。元の能力をそのままあてはめられるものもあるけれど、当然、世界観に合わせて新しいものも考えなくちゃいけない。そこが大変やった。
河端 たとえば《双子の死神アダム&エヴァ》などですね。
双子の死神アダム&エヴァ
 特殊効果は「次のあなたの手番まで、すべての他プレイヤーは団員を2枚単位でしかプレイできない」というもの。手札が1枚しか残っていないときに、このカードを出されると他プレイヤーはお手上げです。
安田 逆にスポンサーの【ジャック・オ・ランタンの訪問者】(効果:全員、手札を1枚左隣のプレイヤーに渡す)なんかは、元からあったんよな?
河端 いえ、あれはぼくが作りました。
安田 ええ? あの効果のどこがファンタジーやねん(笑)。
河端 だってハロウィンって近所をまわってお菓子もらうじゃないですか。だから――
安田 なるほど、深いな(いままで知らんかったわ(笑))。ともかく、最初のゲームではうまくいってたのに、新しい世界観に合わせようとすると、なんであんなに苦労したんかなあ、というのが実感です。
―― カードごとのバランスということでしょうか。
安田 それだけじゃなくて、他にも色々あるんですよ。たとえば、デック構築型のゲームでは手札回転が肝になるんやけれど、やりすぎるのも危険。それから、あまりバランスをとりすぎてもいけない。さっと終わって、ああ、もう一回やりたい、と思えるくらいがちょうどいいんです。


●『シルク・ドゥ・モンスター』の楽しみ方
―― いま「さっと終わって」というお話が出ましたが、『シルク・ドゥ・モンスター』のプレイ時間は30〜45分と短いですね。
安田 それはもう至上命令です。カジュアルなカードゲームということで、絶対1時間かかったらダメです。
―― プレイ人数が3人から5人までと、柔軟な作りになっているのもうれしいところです。
安田 しかも、プレイ人数によってゲームががらりと変わる。これはぜひ言っておきたかったことです。『シルク・ドゥ・モンスター』は3人、4人、5人と遊ぶ人数によって、ものすごく違ってきますから。
―― と言いますと?
安田 自分の思ったとおりにやりたいなら3人で、思いどおりにならないシビアさを遊びたいならぜひ5人で遊んでください。バランスがいちばん取れているのは4人プレイです。
河端 簡単に説明すると、プレイ人数に関わらず、毎ラウンド競りにかけるスポンサーの枚数は4枚で変わらないんですね。なので、5人プレイになると、スポンサーを取れないプレイヤーが必ず一人出てくるんです。そこがシビア。
安田 ただ、一回潜ったら、次のラウンドには圧倒的に有利になります。そのあたりの駆け引きもぜひ楽しんでいただきたいところです。(潜る=次の手番に備えて、無理をせず力を蓄えること)
―― ルール自体も比較的簡単ですね。
安田 いやあ、それがねえ、自分でいうのもなんやけど、SNEのゲームは遊び込めるゲームになってる自信はあるんですよ。けれど、最初に遊ぶときがねえ(笑)。
秋口 ああ、わかります、ルール読んだだけではすぐにピンと来ないゲームほど、やってみると面白いというのはよくありますね。
安田 そうなんだよ、そうした感覚に慣れてるからか、SNEのゲームもどうもそうなるきらいがある。
―― たしかに競りという新しい要素は入っていますが、『シルク・ドゥ・モンスター』のルール自体は、ウニ頭の私から見てもシンプルだと思いますよ。1回やると忘れない。(ウニ頭:三歩歩くとルールを忘れるお気楽ゲーマー。筆者の造語です)
安田 そうやっておだててくれるけど、ほんまかなあ?(ジト目)
―― ほんとですって(笑)。個々のカードの決まり事はありますけれど、忘れるほどのルールはないじゃないですか。
安田 そういえば、このあいだ大学で学生にやってもらったとき、めちゃくちゃ面白いと喜んでくれたね。学生って意外にゲーマーは少ないんやけど(安田教授は某大学でゲーム関係の講義を受けもっています)
―― この頃は思いのほか身近なんですね、競りって。ヤフーオークションとかありますし。
安田 そう、時代の影響ってあるんです。モンコレのときも、クレジットカードとかテレフォンカードとか、本当にいろんなカードが広まってたから、カードゲームは絶対行けると思ってた。今度の競り(入札)についても、実際にやってるかどうかは別として、みんな、ちゃんと競りの知識はもってる。
―― ゲームとしてはプレイヤーの技術がものをいうタイプでしょうか。
安田 うーん、技術というよりは、まず競りに慣れてもらうのが第一かな。そこで差がつきやすいからね。
―― 競りには「コツ」みたいなのがありますよね。一気にばーんと勝負に行くか、ちょっとずつせり上げて様子を見るか、とか。
安田 そうそう、それから、最後まで自分が責任をもって競っていくのか、さっと退いて人に任せるのか。そういうタイミングのはかり方とかが、ある意味論理的で、慣れてくると実に面白いんです。
―― そういえば、テストプレイではよく河端さんの悲鳴が聞こえてましたけれど。
安田 河端も慣れないうちは、ほしくもないカードの競りに引っぱりだされて「なんでぼくにばっかり勝負を押しつけるんですか、ひどいですよ!」と泣かされてたな。
河端 いまはもうにやにやしながら遊んでますけどね、成長したんで(笑)。


●セレクトカードゲームについて
―― 団員カードは19種類ありますが、そのなかから8種類(5人プレイなら10種類)を選んで遊ぶんですね。
安田 SNEでは先に『エンドブレイカー!SCG Build&Break』(発売:ブロッコリー)を作っています。ぼくは「セレクトカードゲーム」という言葉を使っているんですが、遊ぶたびに違う楽しみができるのがいいところです。
―― ゲームに使用する団員カードはプレイヤーが意図的に選んでよいのでしょうか。
安田 もちろん、全然かまいません。ただ、スポンサーカードはランダムのほうがいいでしょう。意図的に選ぶ団員カードと、なにが出てくるかわからないスポンサーカード、二つが組み合わさって、さらに面白くなっていると思います。
―― 選ぶカードによって、いろいろなタイプのデックが作れますよね。
河端 デック圧縮をやりたい人は《スライム大回転》と《ゴーストパレード》と《ドワーフの巨砲》とか。
安田 3人や5人で遊ぶ場合は獲得するスポンサーの枚数に差が出やすいから、《ミノタウロスVSケンタウロス》を使ったり――(はっと我に返り)あ、ごめん、ちょっと話が濃すぎた(笑)?
―― いえ(笑)。
安田 言いたかったのは、1枚のカードでも見る目によって意味が変わってくるということ。最初に選ぶ団員カードでもゲームは違ってくるし、そこから作る個々のデックでも違う、プレイ人数によっても違うし、やりなれてくるとまた違うんです。
河端 ルール自体はシンプルなんですが、濃く遊ぼうと思えばいくらでも濃く遊べる、深いゲームになっていると思います。
―― そのあたりは、JGC2012体験会やその後のイベントなどで、ぜひ実際に味わっていただきたいですね。


●☆『シルク・ドゥ・モンスター』のここが売り!
―― では『シルク・ドゥ・モンスター』のここをぜひ楽しんでほしい、というところを教えていただけますか。
安田 わたしはもうたくさん話したので、秋口くんどうぞ。
秋口 やっぱり競りの駆け引きの楽しさじゃないですか。
安田 うん! 基本はそこやろうね。
河端 あと、ぼくが感じたのは、4人プレイをやったときに、デックが満足のいく形になるのがラストターンなんですよ。8割5分までできてて、あと1ターンあれば完璧だ、というところでゲームが終わる。そこがすごくいいバランスじゃないかと。
秋口 ああ、その喰いたりなさが飢餓感になって、もう一回やろうとなる。それはいいことだね。
河端 なんすか、その優しい目は(笑)。
―― あとですね、人のやってるデックがよく見えるんです。社長がよく《スライム大回転》を使ってデックを回転させておられるのを見て、あれもいいなあって。
安田 そう、たとえば、モンコレだと二人対戦ゲームだし、デックに強い弱いが出てくるのはやむを得ない。でも、モンコレでも楽しいファンデックは組めるし、『シルク・ドゥ・モンスター』にはそうした面白さがあると思うんです。
河端 勝敗だけでなく「自分はこういうことをやりたいんだ」という夢を見られるんですね。
安田 うん、《スライム大回転》とスポンサーカードを使って《ゴーレムピラミッド》作って「おら〜演技力15じゃー」とかね。まあ、無理やけど、この快感がね。
秋口 プレイした人向けの発言になってますが、大丈夫ですか(笑)。
―― 周りで見てる人も楽しめるデックが組めるということですね(と、まとめに入るも――)
安田 (さらに熱弁はつづく)ほら、すくなくとも手札に6枚《ゴーレムピラミッド》が来て、スポンサーの効果で2枚引いて合計8枚。これで15点になって、この快感がね――
秋口 いま、ちょっと頭のなかでプレイはじまってませんか、ボス。
安田 (はっ)……いやいやいや、すみません。
一同 爆笑
河端 いいことですよね。「プレイしたい度」が高まってるってことですからね。
安田 いや、だって快感でしょ、それを狙ってやれるのは。というように、このゲームは勝ち負けと同じくらい展開が面白い。
秋口 あ、それはたしかに。他のデック構築型ゲームに比べたら、だんぜん終わったあとの感想戦が白熱する気がしますね。
―― ゲーム中も自然とコミュニケーション取りますよね、このゲームは。
安田 そう、そこが新しい。わたしが言い残したのはそれです! ふつうデック構築のゲームというのは自分一人でいかにうまくやるかという、プラニングのゲームじゃないですか。でも『シルク・ドゥ・モンスター』はネゴシエーションというか、人との関わりがすごく面白いゲームなんです。ぜひ、そこを楽しんでいただきたいですね。


●今後の予定
―― JGC2012以降のイベントの予定などは富士見書房のサイト(http://www.fujimi-trpg.jp/cirque/)に掲載されると思いますが、9月には藤澤さなえさんのリプレイもJGCで先行発売されるんですね。
安田 はい、新紀元社のネオゲーム文庫から出ます。遊んでくださる方にはまず競りの部分をわかってほしいので、絶対リプレイが必要だと思ってました。RPGのリプレイとは違いますが、ゲームシステムをいかに楽しめるかを紹介しつつ、読んで楽しい一冊になっています。やっぱり、リプレイって面白いよね。
―― 同じくネオゲーム文庫から出る秋口さんの『魔女館からの脱出』とともに、JGC2012に並ぶ予定です。リプレイについては藤澤さんに後ほど改めてインタビューさせていただくとして、そのほかに予定はあるでしょうか。
安田 河端のアレ(小説)はいつ出るんやったっけ?
河端 詳しいことはまだお話しできませんが、いちおうファンタジア文庫で年内出版を目指して鋭意執筆中です。
安田 『シルク・ドゥ・モンスター』のゲーム第二弾もまた出したいので、みなさん、今度の『シルク・ドゥ・モンスター』、遊んでくださいね。
―― ありがとうございました。SNEサイト内『シルク・ドゥ・モンスター』コーナーでも、簡単に遊び方を解説しています。発売までにチェックして、JGC2012ではぜひお友だちに差をつけてくださいね。
 

◆『モンスターサーカスへようこそ!
〜シルク・ドゥ・モンスター リプレイ〜』◆
―― ついで『モンスターサーカスへようこそ!〜シルク・ドゥ・モンスター リプレイ〜』(以下、「リプレイ」)を執筆された藤澤(さなえ)さんにお話を伺います。こちらも『シルク・ドゥ・モンスター』ゲーム本体と同時に、JGC2012ネオゲーム文庫で先行発売されるのですね。
藤澤 はい、じつは『ボードゲームナビ 2012-02 』(2012年7月発売/新紀元社)に第一話が掲載されているのですが、せっかくだから二話、三話も書いて単行本にしようという話になって、ネオゲーム文庫さんから出していただけることになりました。
―― おお、そうでした。ぜひ『ボードゲームナビ』のほうもチェックをよろしくお願いします。
藤澤 そちらはページ数の関係で、半分ぐらいに圧縮してあるんですが、もちろん短くても楽しめる形にしました。今回の単行本では、より詳しく遊び方を説明していますし、プレイヤーのキャラも立ってます。
―― 藤澤さんは『シルク・ドゥ・モンスター』を遊ぶのはほぼ初めてだったと思うのですが、いかがでしたか。
藤澤 面白かったです。ルール自体はすごくシンプルなのに深いですよね。
―― やるたびにゲームが違う?
藤澤 そうです、そうです。第一話のときは、私もあまりわからないまま遊んでたんです。それが二話め三話めとなると、『ボードゲームナビ』で見せたあのライトな藤澤さなえは姿を消し、どっぷりゲームに入り込んでしまって。
―― しっかり遊んでましたね(笑)。いま話題に出たんですが、単行本は3話構成で、第一話が4人プレイ、第二話が5人プレイ、第三話が3人プレイになってるんですね。。
藤澤 はい、社長もおっしゃったと思うんですが、プレイ人数でゲームが全然違う、それは本当にびっくりしました。
―― その面白さはリプレイを読んでいただければ伝わると思うのですが、藤澤さん自身の感想はいかがでした?
藤澤 5人プレイ(第二話)はシビアでしたね。プレイヤーは5人なのにスポンサーは4枚しかない。1枚もスポンサーを取れない手番が出てくる。そうすると自分が出遅れてるのが目に見えるようで、すごい焦るんですよ。
―― プレイヤー5人やからスポンサーも5人にしたらええやん」て思うよねえ。
藤澤 思いましたよぉ(笑)。でも、そこがまた面白くて、最後までのラウンド数を数えて、ここで1枚取っとかなあかん、みたいなことを考えて。逆に第三話の3人プレイ派手、でしたね。
―― というと?
藤澤 今度は4人のスポンサーを3人で競るんですけど、1枚残ったスポンサーを取るために余力を残すか、狙いの1枚を確実に取るかをまず考えるんですよ。で、みんなが余力を残そうとするぶん、やりたいことがやりやすくなるんです。
―― だから、派手になる、と。
藤澤 それだけに、勝負に行って1枚もスポンサーを取れなかったりすると、「わあ、どうしよう」って頭が真っ白になる。リプレイでは、プレイヤーの一人のみるくさんがそれをやっちゃってます。あ、みるくさんというのは、初心者のわたしにゲームを教えてくださるベテランプレイヤーさんなんですけど。
―― ほかにディベロッパーの河端ジュン一が解説のお兄さん役として登場しますし、ストーリー志向のトヨ氏も大活躍ですね。
藤澤 トヨ氏は一見ギャグに走ってるように見えるんですが、ゲームとしてもしっかり遊んでいて、ありがたいプレイヤーさんでした。
―― あとは第二話のセレブなサーカス団の団長四ツ谷さんと、初心者の藤澤さんの合計5人のプレイヤーが登場しますね。
藤澤 はい、みなさんSNEのメンバーなんですが、ちゃんと個性があって、そういう意味では(キャラ設定の)苦労はなかったですね。
―― じつは、競りゲームってふだんあんまり遊ぶ機会ないのよね。
藤澤 そうですね、言われてみれば、私、引き際を見極めたり、はったりをかけたりするゲームってあまり得意じゃないかも?
―― わかる(笑)。リプレイ読んでても「あ、さなえちゃん、違うねん、そこは突っ張ったらあかんねん」とか、「そこはとりあえず競りをつりあげとくねん」とか、いろいろ言いたかったよ。
藤澤 でしょ、とくに第一話とか(笑)。でも、『シルク・ドゥ・モンスター』はすごく楽しめました。競りゲームってテーマが重いのが多い気がするんですよ。商品を競るとか、株の取引だったりとか。
―― ああ、このゲームでは競りでスポンサーを獲得してなにをするかというと、ナメクジ(スライム)に車輪を回させるんだもんね、脱力するというか。
藤澤 ですよね(笑)。テーマがユーモラスなので「あ、失敗しちゃった」で許される感じがします。
―― だからって、気に入ったスポンサーだけを集めてると、ぜんぜんゲームに勝てない。そこは私も藤澤さんと一緒だから、よくわかります。
藤澤 そう、そうなんですよ!
スポンサーには能力が強くない代わりに、たくさん人気(勝利点)を生んでくれるタイプと、勝利点はないけれど、なにかと便利なタイプに分かれます。藤澤さなえは「リプレイ」のなかで、可愛いイラストに惹かれて勝利点のないスポンサーばかり選んでいました。
―― だから、これは強く言っておこう。「ゲームに勝ちたかったら――」
藤澤 勝利点のあるスポンサーを集めましょう!」(笑)。一話二話で学習した私は、第三話では、ずっとそれを合い言葉にしてました。
―― ところで、今回リプレイを書くにあたって苦労したことは? やっぱりTRPGのリプレイとは全然違ったでしょう?
藤澤 ぜんっぜん違いましたね。無駄がないんですよ、動きに。TRPGだと魔法がかからなかった、とかそういう状況があるじゃないですか。でも、ボードゲームだとなにか行動したら、絶対そこに意味があるんです。
―― なるほど。しかも、プレイ中、いちいち私はこれを狙ってこうします、と言ってしまったら、ゲームにならない。
藤澤 そうなんです、あとから録音したものを聴いて、やっと「ああ、このプレイヤーはこういう考えだったのか」とわかるんですけれど、あんまりそれを書きすぎても臨場感がそがれますし。
―― リプレイ読んで思ったんだけど、ベテランプレイヤーみるくさんの考えてることってくどいよね。
藤澤 くどいです(笑)。録音を聞きながら「わ、みるくさん、こんなこと考えてたんや」ってわかって、すごいと思いました。
―― 実際のプレイのときには手番ごとに写真を撮ってたし、プレイヤーさんにはなにを何枚出したとか、口に出してもらって録音してましたよね。
藤澤 なんですが、みんな、だんだんプレイに熱中してしまって……
―― 忘れてしまう?
藤澤 はい、もう第三話なんか写真3枚くらいしか撮ってませんでしたよ(笑)。
―― あと、TRPGと違って、ボード/カードゲームではどこでクライマックスが来るか予測がつかないところがあるりますね。
藤澤 はい、ゲームの説明も必要ですし、その上で見せ場も作らないといけない。どこをどう抽出するのか、編集するのがいちばん大変でしたね。
―― そうした苦労がありつつ、藤澤さんとして、ぜひここを楽しんでほしい、と思うところはどこですか。
藤澤 気楽に遊べる感じ、かな?
―― (……ん? あれ?)
藤澤 ガチ勝負もできるんですけれど、話が盛り上がる要素がいっぱいあるんですよ、カードやスポンサーの名前や特殊能力に。
―― (さなえちゃん、『シルク・ドゥ・モンスター』のゲームの宣伝になってるぞ(笑)?) リプレイでもそこはすごくよく伝わってたと思います。
藤澤 はい、さっき言ったように、わかりやすく編集はしましたけれど、リプレイ自体になにかを付け加えたりはしていないんです。内容は実際のプレイ、ほぼそのままです。やってるだけで盛り上がる、そのところをリプレイを読んで感じていただければうれしいですね。
―― 私自身の感想としては、ゲームの解説書というより、楽しみ方、味わい方がすごくよく伝わってくる一冊でした。読んでて、つぎはどうなるの? とわくわくしました。
藤澤 そう言っていただけると頑張ったかいがあります。
―― とくに、第一話から第三話へと進んでいくにつれて、藤澤さんの「ゲーマー度」が増していくのがリアルで面白かったね。
藤澤 はい(笑)、スポーツものとまでは言いませんが、初心者の藤澤がベテランプレイヤーを相手にいかに戦うか、次々襲いくる困難をいかに乗り切るのかも見物だと思います。
―― というように、読んで楽しいゲーム指南書になっています。JGC2012で『シルク・ドゥ・モンスター』を購入してくださる方も購入をお迷いの方も、ぜひ機会がありましたらお手にとっていただけたらと思います。
藤澤 よろしくお願いします。



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